上手にデレゲーションする上司は
部下を大人として扱っている

◆部下が忙しすぎて、彼らの仕事を増やすのをためらっている場合は、現在の仕事量や進め方をどう効率化するかを考える

 いくつかの仕事をなくす、自動化する、外注する、あるいは単純化して合理化することはできないでしょうか。罪悪感から自分が抱える仕事を増やしてしまうと、疲弊して効率が下がるだけです。

◆訓練することにより、他の人もその仕事ができるようにする

 誰かに時間をかけて説明するよりも、自分でやった方が時間の節約になると思えるかもしれません。しかし、それは短期的な節約にすぎません。将来も引き続き、あなたがその仕事を担当し続けることを意味するだけだからです。先行投資が必要になったとしても、長い目で見れば時間の節約になります。

 任せることで、部下の能力や才能を十分に発揮させ、活かすことができるのです。

 大切なのは、部下を信頼し、任せればその仕事をこなしてくれるという信念を持つことです。部下は無力で無能だと決めつけるのではなく、依頼されれば期待に応えてくれると考えることです。そして、部下はあなたから学ぶだけでなく、自ら学ぶことも、同僚から学ぶこともできるということを忘れないでください。

 ベストセラー書『世界一流エンジニアの思考法』(文藝春秋)でも、著者の牛尾剛氏は、マイクロソフトのアメリカ本社で観察した働く環境と日本の働く環境を比較して紹介しています。

「(アメリカでは)たとえ新人だったりインターンであっても、マネージャーの接し方は同じだ。見ていると彼らもやればできる。まだ本人にセンスや能力がなくても、周囲が助けてくれるからだ。日本では、新人は『できないもの』としてエクセルのスクショとりみたいな簡単な仕事しかふらないが、『できるもの』として大人扱いすると、周囲の助けを借りつつきちんとやれるのだ。スキルの習得も早く、皆堂々と自信を持った顔をしている。今の自分の実力以上のことは仲間が助けてくれるという安心感があるからだ。」

 上手にデレゲーションする上司は、すべての部下を大人として扱っているといえます。