その義母はその女性(つまりお嫁さん)に向けて「近くの山の紅葉がきれいになってきました。明日さっそく見に行ってきます!」というメッセージを送り、それを見たお嫁さんは文字どおりに受け取って「いいですね、いってらっしゃい」などと返事したという。
だが、後で判明したところによると、そのメッセージに込められた義母の本当の意図は、「明日義実家へ来い」ということだったそうだ。
これを読んだとき、私は「知るかそんなもん!」と絶叫しそうになった。この義母は、嫁をエスパーか何かだと思っているのだろうか。
しかしこのお嫁さんは、義母に対してキレたり呆れたりしていたわけではなく、単にこれを面白い話として投稿していた(と思う)。きっと心の広い方なのだろう。
ただ個人的には、もし身近にこういう「言葉の中に勝手な意図を込めがち」な人がいる場合は、最低でも5回に1回ぐらいの頻度で「そんな言い方では分からない」とはっきり言った方がいいように思う。そういう人に合わせて意図を読み取ろうとしても、疲れるだけだからだ。
実際のところ、たいていの言葉については、話し手が「こういうつもりで言った」とか「そういうつもりじゃなかった」と言うことができてしまう。それに、たとえその人の意図を読むのに上達し、めでたく「エスパー認定」されたとしても、さらに難しい上級問題が待っているかもしれない。
そしてそれを解読するのに失敗したら、「あなたなら分かってくれると思ってたのに、がっかりした」などと言われるのがオチではないだろうか。もちろん、本気でエスパー修業をしたいのであれば話は別だ。
「意味と意図のずれ」を
利用したのが合言葉
このように「意味と意図のずれ」は混乱の種になることがあるが、話し手と受け手との間での了解さえあれば、それを逆手にとって利用することもできる。「合い言葉」はそういった例の一つだ。「山」と言って「川」と返せば仲間だと見なすような場合、「山」や「川」の本来の意味は何ら関係がない。それらはただ、「お前は仲間か?」「私は仲間だ」という意図を伝えるのみだ。