洋菓子店を営む30代女性・マリさん。1年前に独立したものの、数学が苦手だった彼女はいろいろな壁にぶち当たっていた。そこで大人向けの数学塾を経営する堀口先生に教えを請い、救いの手を求めることに。今回は、「当確が早いのはなぜ?」「出口調査って偏ってない?」など選挙に関する疑問を「確率」を使って徹底解説!意外と知らない選挙のあれこれを数学的に考えていく。※本稿は、堀口智之『1杯目のビールが美味しい理由を数学的に証明してみました。』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
開票が始まってすぐに
当選確実が出るのはなぜ?
堀口先生 実は、選挙も確率が応用されています。投票所が閉じた瞬間に当確が1秒でわかることってありますよね
マリさん たしかに。テレビを見ていても、開票が始まったばかりにも関わらず、「当選確実」といった報道が出ることがあって、不思議に思っていました。全然開票してないですよね?
堀口先生 あれは、出口調査をやっているんですよね。有権者が投票所を出た直後に、「誰に投票したのか?」を匿名で尋ねます。このデータから、全体の投票傾向を予測していくのです。適当な人数をピックアップして、そこから全体の傾向を推定していくわけです。
マリさん なるほど。まさに確率っぽいですね
堀口先生 確率っぽいというより、まさに確率そのものです(笑)。投票するか、しないかの2択ですから、二項分布としても考えることができます。例えば、投票した人のうち100人にアンケートをとりました。このとき、仮にAさんという方に、50人が投票したことがわかったとします。このとき、日本人全体でどのくらいの人が投票したのかが一発でわかってしまうのです
マリさん えっ!たった100人で、ですか?投票権を持っている大人の100万分の1くらいしかアンケートとっていないのに、わかるわけがないと思ってしまいます。
堀口先生 そうですよね。でも、わかるのです。もう少し正確に言えば、だいたいどのくらいの人がAさんを支持しているのかがわかります。例えば、もう一度100人にアンケートをとるとどうなると思いますか?
マリさん それはやはり50人くらいがまた「Aさん」と答えそうです。でも、先ほどが50人だったからといって、今度は30人かもしれないし、もっと少なくて10人くらいしかいないかもしれませんよ?
堀口先生 おっ!鋭いですね。このように、何度か投票した方にアンケートをとると、回答の比率がブレます。しかし、そのブレ方に法則が出るのです。実は、このとき、標準偏差が5人であると計算できます。つまり、平均から±1σ(σ標準偏差)の範囲となる45人~55人になる確率が約68%であることがわかり、±2σの範囲となる40人~60人になる確率がなんと約95.4%となるわけです。