「“協調主義”である現代では、充実感を得にくくなりました」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さんだ。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援も行う。
その金間さんが「働くすべての人に届けたい」との思いで書き下ろした新作が『ライバルはいるか?』だ。社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べ、「誰かと競うこと」が人生にもたらす影響を解き明かした。挑戦する勇気を得られる内容に、「これは名著だ!」「もっと早く読みたかった!」との声が多数寄せられている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して、「人生が充実する考え方」を紹介する。
僕たちの社会が「失ったもの」
本書の第2章では、「現代からライバルが消えた理由」と題し、日本における競争環境の変遷と現状を整理した。
いかにして競争そのものが「悪」とされ、日本社会から排除されてきたかを振り返った。
しかし、ここに思いもよらなかった皮肉的な結末が訪れる。
良かれと思って進めてきた競争原理の排除が、事前には想定していなかったところで大きな副作用を生むこととなった。
それが「個としての強さ」や「個としての成長」の消失だ。
「競争」から「協調」へ。
「個」ではなく「みんな」で。
「飛び出る」より「合わせる」。
優しく、温かい考えだが、本当にそれだけでよかったのだろうか。
もしかしたら僕たちは、とても多くのチャンスを失ってしまったのではないか。
学校や社内で競い合うことは、もうほとんどない。
同期や先輩とバチバチしたり、業績を競い合うことももうない。
こうして僕たちは、一体どれほどの「失敗」や「敗北」の機会を失っただろうか。
それこそが、「学び」と「成長」の機会だったのではないか。
今の日本は、愕然とするほどのアンチ競争社会だ。
その代わりとしての超協調社会。
僕はここに強く警鐘を鳴らしたい。
目を覚まそう。見境のない協調主義は同調を生むだけだ。
そうして強化された同調からは模倣しか生まれない。
どっちを向いても同じ、量産型社会。
当たり障りのない「最大公約数」ばかりの社会だ。
だからもう一度、正しい競争を考えよう。
理想的な競争環境とは何か。どうしたら協調や共同のメリットを失うことなく、競争の正の側面を復活させることができるのか。
そのヒントが、ライバルにあった。
これが本研究の成果だ。だから何度でも言う。
ライバルを持つことで、僕たちはより一層努力し、お互いの存在を認め合い、協力し、高め合うことができる。
ライバルがいることによって、自分を見つめ直し、積極的に行動するようになる。
ライバルの存在こそが、自分自身のビジョンを明確にし、成長の道しるべとなってくれる。