「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。

「長く続けてきたこと」に着目する
私たちが、人生で自分自身をプロデュースするとき、重要なのは自分の「強み」ではなく「特徴」を抽出することです。
ではどこに着眼すれば、私たちは自分の「特徴」を捉えることができるのでしょうか?
「調達困難な資源や能力」とは「時間資本を大量に投下しないと獲得できない資源や能力」のことですから、ひとつの考え方として、着眼するべきなのは「長く続けてきたこと」だということになります。
競争優位の形成に貢献する調達困難な知識やスキルが「身につけるのに長い時間がかかる」のであれば、自分の人生を棚卸してみて、他人と比較して際立って長い時間を投入した活動に、その知識やスキルは関連しているはずです。
本書で紹介していますが、南極点初到達などの偉業を成し遂げたノルウェーの探検家、ロアール・アムンセンは、幼少期から探検家に憧れ、ありとあらゆる探検記を読んできたことで、過去の探検に関する疑似的なデータベースが脳内に形成され、これが数々の探検を成功裡にみちびく基礎的なリテラシーになっています。
不肖ながら筆者の場合、学生時代から慣れ親しんできた哲学や歴史や人類学や心理学といった人文科学領域がそれに該当する、ということになるのでしょう。
当の本人は、それらが将来、労働市場において競争優位を形成することに貢献するなどというパースペクティブは1ミリも持っておらず、純粋に「ただ好きだから」ということで時間資本を投下し続けていたわけですが、逆にだからこそ、膨大な累積時間を投下できた、ということも言えるでしょう。結果的に、経営学の知識に頼らない、人文学の知識に頼ってコンサルティングを行うというアプローチが、私にとってはコンサルティング市場におけるブルー・オーシャンを生み出してくれたという側面は否めません。
私は、人生を超長期のプロジェクトとして捉えることを提案していますが、人生の全てを見通すことはできません。
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業生に向けて語ったように、私たちは未来を見るとき、また同時に過去も見ることで、過去から現在、現在から未来へと「点をつないでいく=Connect the dots」しかないということです。