そんなときは「ポジティブ変換」という技法を使いましょう。普通に反応すると、まんまネガティブに聞こえてしまうような内容を、アングルを変えてポジティブな表現に変換する方法です。例えば、知人から「最近仕事がキツすぎる…」と愚痴をこぼされたら、ホントにキツそうだね…、とだけ言うよりも、「今後に繋がるいい経験をしているね」と伝えたり、「夫婦関係が上手くいってない…」という話題になったら、「今だからこそ、ホンネを話してみるチャンスだよね」などと、ポジティブな見方に変換したりするのです。
これは、行動経済学の「フレーミング理論」を応用したものです。ネガティブな話題も、ポジティブ変換して伝え、その場を明るくし、前向きな気持ちにさせることも、重要な「回す力」です。
※フレーミング理論
伝えたい事実や趣旨が同じだったとしても、見せ方や伝え方次第で、受け取り方が変わる心理。例えば、「この手術を行うと10%が死ぬ」というのと「90%の人が成功する」というのでは、同じ事実であるにも関わらず受容度が異なる、といった心理。
「感じのいい人」だけでなく
リスクヘッジにもなる
「ポジティブ変換」の切り口例
○誰もが経験すること
●「そういうことは、どんな人にでもよくあることだよ」
○ごくごく小さいこと
●「大きな動きの中で、ほんの僅かなことです」
○私も皆も経験すること
●「私も、過去にそんなことがありました」
○いい経験/学び
●「今後につながる、貴重な経験だと思うよ」
○新しいことへの布石
●「新しいことができるきっかけになるよ」
この技法は、「感じのいい人だ」と思われるためだけでなく、自分に対する「思いもよらない感情」を生み出さないようにするためのリスクヘッジの意味合いもあります。
例えば「自分なんて、もう40代になっていい歳だし恋愛なんて…」とボヤいたときに、「確かに!」などと返されたら、当たり前ですがカチンときます(実体験)。そうではなく、仮に本心でなくても「経験から生まれるオーラに魅力を感じる方は、たくさんいそうですよ」などとかわしてくれると、真に受けることはないですが、気分はいいですよね、きっと。
雰囲気や態度、言い回しやちょっとした表現だけで、しばしば、こちらが意図せぬ相手の反応を引き起こしてしまうことはよくあります。それが人間関係です。だからこそ、できるだけポジティブに表現するクセを付けておけば、そのような予期せぬリスクから極力回避することができます。
楠本和矢 著