シリアの反政府勢力「シリア解放機構」がアサド政権を倒し、平和的な政権移行となるかが注目されているが、シリアに民主主義がもたらされるかのような報道は、うのみにできないと佐藤氏は指摘する。今後のシリアが辿るシナリオとは?(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
「シリア解放機構」の母体は国際テロ組織
1月3日、ドイツとフランスの外相がシリアの暫定政権「シリア解放機構」の指導者アハマド・シャラア(通称ジャウラニ)氏と会談するなど、平和的な政権移行となるかが注目されています。
シリア解放機構がアサド政権の打倒を掲げてシリア北部で攻勢を強め始めたのは、昨年の11月27日。第2の都市アレッポを2日で制圧し、わずか10日で首都ダマスカスに進攻。「ダマスカスが解放された」と宣言したのは、12月8日のことです。
反政府勢力を主導しているのは、シリア解放機構という過激派組織です。その母体は国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」。2011年にシリアの内戦が始まった後に結成されました。ヌスラ戦線が分裂し、ジャウラニ氏の率いるシリア解放機構が生まれて、シリア北西部イドリブを拠点に活動してきたのです。
こうした経緯を考えれば、今後シリアに民主主義がもたらされるかのような報道は、うのみにできるものではありません。
ダマスカスが陥落した12月8日、筆者はテルアビブ在住のモサド(イスラエル諜報特務庁)の元高官に連絡を取りました。