総予測2025#20Photo by Kazumoto Ohno

2025年で第2次世界大戦後80年を迎える今、新しい米大統領の就任で国際秩序が大きく変わる可能性がある。欧州と中東で長引く戦争の行方はどうなるのか、特集『総予測2025』の本稿では、シナリオを大胆予想してもらった。(国際ジャーナリスト 大野和基)

トランプ氏は日本の防衛費増額を要求
日本が要求を回避できる可能性は低い

――ドナルド・トランプ氏の米大統領就任で、2025年の国際リスクはどれだけ高まるでしょうか。

 トランプ氏は関税を引き上げ、多国間の制度や協力を弱体化させ、米国ファーストで行動する方針です。これにより、サウジアラビアのような一部の湾岸諸国、イスラエル、台頭するインドなど、中核ではない広範な友好国が新政権の恩恵を受ける可能性が高い。ロシアや北朝鮮といった敵対国にとっても同様です。一方で、日本のような伝統的な米国の同盟国は厳しい状況に陥るでしょう。

――冷戦以降、善と悪、民主主義と独裁主義といった概念の中で、主要国は前者を支持し、後者を罰すべきだと考えてきました。

 そういったことも含めて、トランプ氏を支持する米国という国は、もはや従来型の価値観ではないことを同盟国側はもっと自覚する必要があります。グローバル化を支えた自由貿易システム、人権と国連憲章へのコミットメントを含む法の支配――。米国民はこれらの価値観の多くに懐疑的です。

 トランプ氏は、米国がほぼ全ての分野(防衛、経済、天然資源、技術など)で力の優位性を持っており、2国間ディールこそ米国に利益をもたらすと考えている。多国間協定は制約が多く、既存の同盟に不信感を抱き、「米国の富にタダ乗りする国々に食い物にされている!」と思い込んでいます。

 これは同盟国側からすると、特に集団安全保障に関して、由々しき問題です。

――日米の安全保障関係で、トランプ氏は日本の防衛費増額を要求するでしょうか?

 ほぼ確実にするでしょう。日本がGDPの2%を防衛に支出する計画を示しても、それがトランプ氏を満足させる可能性は低い。そして、日本がトランプ氏の要求を回避できる可能性も低いでしょう。

次ページでは、トランプ氏がウクライナ戦争に関して手始めに実行する作戦として、ロシアのプーチン大統領に電話するであろうシナリオを大胆予想。そして、トランプ氏の最も強力な“武器”の一つである、「中東各国との関係」について、日本人があまり知らない意外な事実を明かします。