アメリカでベストセラーとなり、多くの称賛の声を集めた『Master of Change 変わりつづける人――最新研究が実証する最強の生存戦略』がついに日本に上陸した。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。この本が指摘するのは、人生を消耗させる「思考と行動の癖」だ。本稿では、本書の内容をベースに、「忙しいのに手が止まる」と感じた時に有効な「頭を整理する方法」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
忙しいのにパソコンの前に座ると手が動かない
やるべきことが山積みで、時間に追われているのに、パソコンの前では手が止まってしまう。誰にとっても、少なからず身に覚えがある感覚ではないだろうか。
マッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者ブラッド・スタルバーグは、本書の中で次のように指摘している。
日々のストレスの多くは、やるべきことや管理すべきことが多すぎるせいで生じる。このことに気づかない人が多い。
(P.302)
あれもこれもやらなきゃと考えているうちに、結局何も手につかなくなる。仕事がはかどらない原因は、頭がいっぱいの状態に陥り、ストレスを抱えていることだ。
ルーティンをつくる
スタルバーグは、このようなストレスの対処法として「ルーティン」の重要性を説く。
ルーティンがあると、1日の流れが確実に予測できるし、混乱のさなかでも秩序が保たれているような感覚になる。さらに、自動的に行動するようにもなる。自分を奮い立たせたり、次に何をすべきかを考えたりといった余計なエネルギーを使わなくても、淡々と物事に取りかかることができる。
(P.303)
あらかじめ決められていれば、「どうしようか」と悩む隙もないというわけだ。
スタルバーグによると、ルーティンの効果は科学的にも説明できるようだ。
どんなに小さな勝利──1文を書く、ちょっとジョギングする、キルトの1ピースをかぎ針で編む、洗濯するなど──でもドーパミンという神経化学物質が分泌される。この神経化学物質が分泌されると、何であろうともやり続ける意欲が湧く。
(P.303)
行事をつくる
さらに、スタルバーグは「ルーティン」だけでなく「行事」にも着目している。
ルーティンによく似ているのが行事だ。安定していようが混乱していようが、人々が定期的におこなう特定の活動のことだ。
(P.304)
行事は、長い時間軸で見た時のルーティンと捉えることができる。行事にはルーティンと同じような効果を期待できそうだ。
たとえば週に1度の礼拝、月に1度のご近所さんとの夕食会、毎朝キャンドルに火を灯すこと、毎週日曜日に仲間たちとツーリングなど。ルーティンと同様に、周囲のすべてが激変していようとも、行事は秩序と安定をもたらしてくれる。
わたしは世界で何が起きようとも、毎週金曜日になると犬を連れて森を長時間歩く。そしてその時間と空間においては、人生がシンプルで管理しやすいものに感じられる。
(P.304-305)
あれこれ考えているうちに、「何もできずに1週間が過ぎ去ってしまった」と感じることがある。
そんな人こそ、1週間や1ヵ月ごとに行事を設けると良さそうだ。
あらかじめ決まった行事があれば、多忙な毎日から強制的に距離をとることができる。行事で頭をリセットし、次の仕事に向けて心の準備をするのだ。
不確実な状況下でも、行事は安定感をもたらしてくれる。行事は人が粘り強くあるために不可欠なのだ。
(P.305)
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人』の内容を一部抜粋・編集したものです。