まるでSFホラーのようですが、脂肪肝では、そういう「脂肪による不法占拠状態」が徐々に進行しているものと思ったほうがいいのです。
免疫細胞の攻撃力が逆に
マイナスの現象をもたらす
次の段階は脂肪肝炎。アルコールも飲まないし、ウイルスにも感染していないにもかかわらず、肝臓に炎症が起きて線維化が進んでしまう疾患です。先にも述べたように、脂肪肝炎はもう「赤信号」が点灯している段階であり、これを放っていると、肝硬変や肝臓がんに進むリスクが大きく高まります。
なぜ、脂肪肝炎が起こるのかの原因は、複数の要因が複雑に影響しているとされていて、じつはまだよく分かっていません。ただ、最近になって、「肝臓の脂肪化」と、それに伴う「免疫細胞の暴走」が炎症や線維化を進ませてしまうのではないかという知見が有力になっています。
ここは、なるべく分かりやすく説明しましょう。先ほど、「脂肪」を「肝細胞という家に入り込んできたよそ者」にたとえました。このよそ者たちは、肝細胞内に多くたまってくると「毒性」を持つようになります。最初はおとなしかったのに、仲間を増やして勢力を拡大するうちに、さかんに毒を吐いて迷惑行為を働くようになるわけです。もちろん、肝細胞という「家」は、大ピンチを迎えてSOSを発することになります。
そして、この大ピンチに駆けつけてくるのが「免疫細胞」です。
みなさんご存じのように、リンパ球、NK細胞、マクロファージなどの免疫細胞は、「疫」を免れるために、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物と闘ってくれる存在です。もちろん、病気から体を守ってくれる「プラス面」もあるのですが、最近の研究では、免疫細胞の攻撃力は往々にして体に「マイナスの現象」をもたらすことが分かってきました。すなわち、そのマイナスの現象が「炎症」なのです。
マクロファージが暴走して
脂肪たっぷりの肝細胞を破壊
話を戻すと、肝細胞という「家」の大ピンチに免疫細胞が駆けつけてくると、「毒性をはらんだ脂肪VS免疫細胞」という構図でバトルが繰り広げられます。もちろん見事に免疫細胞サイドが勝利するのですが、肝細胞という「家」を舞台にバトルが繰り広げられたため、家がめちゃくちゃに壊され、肝細胞が死んでしまうことになるのです。