いったいどうして、こんなにも痛々しい姿に変わってしまうのか。ここで、脂肪肝から脂肪肝炎、肝硬変へと進む「線維化のステップ」をもう少しクローズアップしておくことにしましょう。

 まず、すべてのコトの始まりは脂肪肝です。

 肝臓では日夜、入ってきた糖質をグリコーゲンに変えたり、余った糖質を中性脂肪に変えたりする作業が行なわれています。いまの時代は誰もが糖質摂取過剰になりがちなので、あり余った糖質から中性脂肪がどんどんつくられているような状態が「普通」になってしまっていると言っていいでしょう。

行き場のないあふれ出した脂肪が
肝臓を不法占拠した状態

 これらの中性脂肪は、通常、いざというときのためのエネルギーとして皮下脂肪や内臓脂肪にストックされるのですが、前述の通り、皮下脂肪も内臓脂肪もパンパンになると、「行き場のないあふれ出した脂肪」が“仕方なく”肝臓の細胞に蓄積されていくことになるわけです。肝細胞からすれば、行き場のない過剰エネルギーを“不法投棄”されたようなものであり、迷惑以外の何ものでもありません。

 たとえば、肝細胞を一軒の「家」、たくさんの肝細胞(家)が集まった肝臓全体を「街」だと思ってください。

 ひとつひとつの肝細胞に脂肪が入り込むのは、一軒一軒の家に「見知らぬ他人」がいつの間にか忍び込んできて、そのまま居ついてしまうようなものでしょう。ただし、その「見知らぬ他人」は、家の中に入り込んできても別に暴れたり犯罪行為をしたりするわけでもなく、一見おとなしい顔をして、あたかも以前から住んでいたかのように振舞うのです。

 しかし、おとなしいからといって気を許していると、やがてふたり、3人と仲間を増やし、徐々に存在感を増して、いつしかその家を占拠してしまうほどの大勢力へとふくらんでいってしまいます。そして、気がついたら、どこもかしこも「見知らぬ者どもに占拠された家ばかり」になり、「脂肪」という名のよそ者に街全体を乗っ取られたような状態になっていってしまう……。