同様に、体重が重くなる、筋肉量が落ちるなど、体の組成の変化でも、トラッキングが不安定になります。おなかの周囲にたっぷり脂肪がついてくれば、重心が前寄りになったり、上半身が重くなったりしますよね。すると、股関節の特定の部位に負荷が集中し、トラッキングが不安定になります。体が変化すると、脳がそれを察知し、筋肉の使い方を変えようとするのですが、当初は体が適応しきれず炎症を起こすので、違和感や痛みが生じるのです。
体が重くなるなどの変化が起きてからしばらくすると、痛みが気にならなくなる場合もあります。ただ、実際は炎症が沈静化しただけで、トラッキングが不安定なのは解消されていないかもしれません。また、痛みを避けるために、従来とは違う筋肉の使い方で動作を行うようになると、新たな炎症やゆがみの発生につながることもあります。
つまり、トラッキングが不安定になる根本的な原因を解消しないと、あちこちに違和感を生じたり、慢性的な痛みを抱えるようになる恐れがあるのです。
不安定になってしまったトラッキングを正常化するには、運動が有効です。なかでも、筋力や柔軟性のバランスをストレッチなどで整えることは重要です。
気になる筋肉だけを鍛えると
体のバランスを崩しがち
トラッキングを正常化させるための運動とは、筋トレでガッツリ鍛えたり、速く走ったりするようなこととは違います。その人に必要な体の使い方を考えながら、バランスを整え、関節などの機能を高めていくという感じです。
股関節であれば、その人が股関節を日々どれだけ動かす必要があるのかによって何をどう鍛えればいいかが決まります。アスリートのように大きく動かすのであれば、筋肉の「出力」もかなり必要なので、筋肉量も多くしなければなりません。
例えばプロの野球選手を見ると、みなさんお尻がデカいですよね。プレーのなかで力を発揮して、股関節を安定させるために大きな力が求められるからです。必要なトレーニングを続けていくうちに、彼らはどんどんお尻が大きくなっていきます。
野球選手の体はカッコよくてあこがれるかもしれませんが、ふだんの生活に適したバランスではないのです。