一般の方は、野球選手のようなトレーニングは必要ありません。高齢者であれば加齢や運動量の低下による筋肉の衰えを防ぎ、ケガを予防して健康寿命を延ばせるようなトレーニングが適しています。

 人には人に合った体作りがあります。このことを理解していないと、暗雲にハードなトレーニングを行ってしまって、正常なトラッキングから逸脱してしまう恐れもあります。

 正しい知識がないと、自分が気になる筋肉だけ鍛えてしまって、体のバランスを崩しがちです。昨今の筋トレブームも相まって、股関節を改善するどころか、痛みやケガを誘発してしまうことだってあるのです。

自分に合った運動を選ぶ
リテラシーが問われる

 例えば、太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋と、裏側の筋肉であるハムストリングスの関係です。人間の体は、大腿四頭筋のほうがハムストリングスよりもパワーがあるのがふつうです。そのバランスが崩れると、かえってケガのもとになります(図2)。

大腿四頭筋,ハムストリングス同書より転載 拡大画像表示

 大腿四頭筋は「レッグエクステンション」、ハムストリングスは「レッグカール」という筋トレ種目が代表的です。スポーツジムでマシンを使ってこれらの種目を行う際、トレーナーが同じ重量に設定することはありません。大腿四頭筋を鍛えるレッグエクステンションのほうをより重い設定で行うのがふつうだからです。

 ところが、大腿四頭筋よりもハムストリングスのほうがパワーが弱いと、「ハムストリングスをもっと鍛えなくては」と勘違いして、レッグカールばかり繰り返しやろうとする人がいます。これは、間違った体の鍛え方です。

 動画サイトが老若男女問わず浸透し、気軽にトレーニングやエクササイズの情報が得られるようになりました。これはトレーナーとしてもうれしい流れですが、一方で間違った知識が広まってしまうという弊害も感じています。