「人間は股関節から老いていく」とフィジカルトレーナーの第一人者である著者は説く。股関節に痛みや違和感が出るようになると、とたんに体を動かさなくなる人が多いからだ。股関節のトラブルで最も多い「変形性股関節症」は、悪化すると安静時や就寝時にも痛みに悩まされる恐ろしいもの。股関節トラブルを防ぎ、元気に歩ける体でいるための動作と靴の選び方とは。本稿は、中野ジェームズ修一『すごい股関節 柔らかさ・なめらかさ・動かしやすさをつくる』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。
人間は股関節から老いていく
最も多いのが変形性股関節症
私が「人間は股関節から老いていく」と思っているのは、股関節に痛みや違和感が出るようになると、とたんに体を動かさなくなる人が多いためです。私はトレーナーとしてなるべくたくさんの人に体を動かす楽しさを知ってもらおうと思って活動していますが、「体に痛みがあるから運動できません」という反応を示す人は高齢になるほど増えてきます。
痛みがあればなるべく安静にしようとするのは、人間の本能なのかもしれません。ですが、じっとしているだけでは股関節の状態はよくなりません。
人間の股関節の耐久年数は、おそらく70~80年だと考えられていますが、50代~60代ごろから股関節の不調を訴える人は増えてきます。なかには、先天的に股関節に問題があって、20代や30代でも痛みや違和感を覚える人もいます。
股関節のトラブルで最も多いのは、「変形性股関節症」です(図1)。
変形性股関節症とは、股関節の寛骨臼と大腿骨頭を覆う軟骨がすり減り、痛みや股関節の変形を起こす疾患です。この軟骨組織は、骨同士が直接ぶつからないよう、クッションのような役目を担っているもので、股関節のなめらかな動きのためには欠かせません。軟骨がすり減ってしまうと、骨へのインパクトが大きくなり、痛みや違和感を生じてしまうのです。
変形性股関節症が進行すると
寝ても覚めても痛い
立ち上がった瞬間や歩き始めたときに、股関節にちょっとした違和感を覚えるようになったら、それは変形性股関節症の初期症状かもしれません。
人間の体も消耗品ですから、長年、生きていればあちこちに不具合が出てきます。股関節も次第に摩耗し、変形や損傷が起きてくるのです。