情報を受け取る側のリテラシーが問われ、玉石混交のなかから自分に適した運動を選ばないと、効果が出なかったり、ケガにつながってしまったりするのです。
大腿四頭筋やハムストリングスなど特定の筋肉を鍛える種目を選んで、自己流でトレーニングをすると、多くの場合、機能的なバランスが崩れ、かえってトラッキングが不安定になったりケガの原因になったりするのです。
運動不足や筋力、柔軟性の低下が
骨盤の「ゆがみ」を招く
関節のトラッキングを正常化し、痛みを予防するためには、自分の体の状態に合ったトレーニングをしなければなりません。その場合の筋トレというのは、ジムでマシンを使うようなものではなく、立ったり歩いたり、立ち上がったりといった動作に近い状態で行うものです。そうすると、体の動きに必要な筋力がバランスよくつきます。
股関節のトラッキングが不安定になる要因の1つに、骨盤の「ゆがみ」があります。ここでいうゆがみとは、骨そのものがゆがんで変形しているのではなく、骨盤が前方に傾いたり後方に傾いたりする状態です。前者を「骨盤前傾」、後者を「骨盤後傾」といいます(図3)。
中野ジェームズ修一 著
ゆがみの背景には、運動不足や活動量の低下による筋力や柔軟性の低下があります。骨盤には、大腿四頭筋やハムストリングスをはじめ、下肢の筋肉の多くが付着しています。ですから、それらの筋肉が硬くなったり、力を出せなくなったり、バランスが悪くなったりすると、骨盤の向きも変わってしまうのです。
骨盤のゆがみは姿勢にも現れます。骨盤が過剰に前傾している人は腰を反った姿勢になりがちで、後傾している人はおなかの力が抜けた姿勢になりがちです。つまり、骨盤過前傾の人は、まっすぐ立っているつもりでも股関節が少し屈曲していて、骨盤後傾の人は逆に少し伸展しているのです。