値段が安くなりがちなバザーで売っている品物をフリマアプリで転売していた大学生。しかし、タワマン街のバザー商品を転売したところ思わぬトラブルに巻き込まれる。転売ヤーが見たタワマン住民たちの虚飾とは。本稿は、奥窪優木『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。
バザーという“鉱脈”を
大学生が発見したきっかけ
ある日、キャンパスを歩いていると、Sは見覚えのある光景に出くわした。
大学のボランティアサークルが主催する、青空チャリティバザーだ。電気ポットから漫画本、地方の土産屋で売っていそうな猿の置物……。キャンパス内の目抜き通りの隅に敷かれたビニールシートの上に、それらが雑然と並べられている。
彼は入学直後、このチャリティバザーで、同じようにビニールシートの上に雑然と置かれていたカメラの交換用レンズを購入したことがある。30年以上前に生産終了している古びたもので、1000円と書かれた値札を見たSは、その場でメルカリのアプリをスマホで開いた。すると、過去に4000円前後の価格で取引されていることがわかったのだ。特に欲しいレンズではなかったが、割安感から衝動買いしてみた。
自宅に持ち帰ってそのレンズに対応する一眼レフカメラに装着してみたところ、傷やカビなどのない、状態の良いものであることがわかった。しかし、すでに同種のレンズを持っていた彼は、年季の入ったこのレンズを持て余す。そこで、メルカリで売却することを決めた。
相場にならって送料込みで4000円で出品してみたところ、すぐに購入希望者からメッセージが来た。値下げ要求だ。数回のメッセージのやり取りによる交渉ののち、結局3500円で手放すことにした。バザーでの購入価格は1000円だったため、手数料や送料を引いても1500円以上の儲けである。
なぜバザーの品は
格段に値段が安いのか
思い返せば、これが彼にとっての最初の転売だったのだ。ただ、バザーで中古レンズを購入したことと、中古レンズを売却したことが別々に記憶されていたため、転売の経験として認識していなかった。
なぜあのレンズは相場より格段に安い値段で売り出されていたのだろう。Sは自分なりに考えてみた。