まず、高齢者世帯が多いエリアでは、骨董品や美術品の出品物が多く、わざわざ出掛けても収穫ゼロで終わることもあった。Sが多少は目利きができるカメラ関連の品も出品されていることが多かったが、それを考慮しても、成果はあまり期待できなかった。

 逆に若年世帯が多いエリアでは、スポーツ用品やキャンプ用品など、状態の良いものが多数出品されていた。若い世代は、趣味やライフスタイルの変化が激しいため、不用品になる所有物も多いからだろうとSは分析した。

 S独自のエリア分析に当てはまらないのが、教会が主催するチャリティバザーだった。

 どんなエリアで開催されているかにかかわらず、編み物や石鹸など信徒らが手作りしたと思われる商品がメインで、金目の代物は少なかった。

 Sはフリーマーケットにも出かけたことがある。バザーは主催者が提供を受けた不用品をまとめて出品・販売するのに対し、フリーマーケットは複数の出店者が自身の出品物をそれぞれで販売するのが基本である。中古品の青空市という点では似ているが、フリーマーケットの出店者は営利性が強いことも多く、転売向きの掘り出し物は見つけにくかった。

精力的なバザー転売で掴んだ
売れ筋商品の傾向

 Sは、こうした自分なりの分析をもとに、買い付けに赴くバザーを選ぶようになっていった。

 各地で買い集めた商品は、その日のうちに自宅で撮影し、メルカリにせっせと出品した。スポーツ用品やキャンプ用品、衣料品などは、状態さえ良ければ売れ行きが良く、出品した数時間後に購入されることもあった。対照的に、子供のおもちゃ、鍋や包丁などのキッチンウェアは、なかなか購入者がつかないことも多く、時には大幅に値下げをして在庫処分を行なった。そうでもしなければ、彼の7畳ほどのワンルームの部屋が、モノで埋もれてしまうのだ。

 売れ筋商品の傾向が掴めてからは、バザーでの買い付けの際に、短時間で売れそうな品物を集中して狙うようにした。

 大学が夏休みに入ると、Sはさらに精力的にバザー転売に勤む。毎週末に4、5件のバザーをめぐった9月には、過去最高の11万6000円が利益として手元に残った。

 時給に換算すると、クリスマス転売(編集部注:クリスマスプレゼントとして需要が見込まれる玩具を事前に購入し、転売すること)よりは3割ほど低い。それでも自ら発案したやり方が通用していることに、充足感を覚えていた。