現代社会の新たな病理となりつつある転売ヤー。中でも違法性が高く、逮捕事例もあるのが“スマホ転売”だ。携帯電話会社の改正ルールに乗じて、ひと儲けを狙う外国人転売ヤーの実態をレポート。本稿は、奥窪優木『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。
カウンターに陣取る
外国人の転売グループ
2021年4月中旬、西新宿の某家電量販店の隅にある携帯電話売り場で、男性店員と男女4人のグループがカウンターを挟んで向かい合っていた。
そのうちの1人のミニスカート姿の女性に対し、男性店員は説明事項を事務的な調子で読み上げている。その内容は俯きがちな女性の耳にはあまり入っていない様子だった。
説明が終わると、グループ唯一の男性が、彼女に何やら指示を出す。すると女性はカバンの中から外国人在留カードを取り出し、店員に差し出した。そして男性店員からショップバッグを2袋受け取り、後ろに立っていた別の女性と席を交替した。男性店員は、先ほどと同じ説明事項を、新たに座ったその女性に向かって読み上げ始める。
彼らの足元には、同じくらいの大きさのビニール製のショップバッグが大量に置かれていた。印字されているロゴは、今いる家電量販店とは別のものだ。彼らはこの店に入店する前、ここから徒歩3分の場所にある別の家電量販店に立ち寄っており、同じような手順で複数のショップバッグを入手していたのだ。
こうして、3人の女性がそれぞれ2袋ずつのショップバッグを受け取ると、彼らはその場を後にした。両手に4、5袋のショップバッグを提げて歩く姿は、3回目の緊急事態宣言が発出される直前の平日の昼間、客もまばらだった店内ではかなり目立っていた。
間違いない。彼らはスマホ転売ヤーだ。
ベトナム人の転売ヤーが増加
SNS上で人員募集も
2021年春頃になると、家電量販店の携帯電話売り場に、彼らのような転売ヤーが多数出没していた。
「今はスマホ業界で顧客の獲得合戦が激しくなっていて、各社とも本体価格の実質的な値引きとなるような特典を充実させている。そうした特典を利用して安く手に入れたスマホを、携帯買い取り専門店やメルカリなどで転売すれば、初期費用や最低契約期間の基本料金、解約手数料などを差し引いても、1台につき、少なくとも数千円の利益が得られますから。転売ヤーが湧くのも無理はないですよ」