タワマンバザー入手品で
偽物トラブルが勃発!
そんなSに10月、絶好と思える機会が巡ってきた。
ここ数年で相次いで建てられたタワーマンションが林立する都内某所で、バザーが行われるというのだ。若い子育て世帯の割合が高いうえに、不用品を溜め込んで置くスペースに余裕のない集合住宅ばかりというそのエリアで行われるバザーは、Sのランク付けによると「Aクラス」。
タワマンには1億円を下らない部屋も少なくない。天空で暮らす富裕層たちは、フリマアプリで高額がつくような品物であっても、気前よくバザーに拠出するに違いない。
現地に足を運び、Sは自分の読みが間違っていなかったと確信する。出品物は、アウトドアグッズや衣料品など、子育て世帯密集エリアの典型だった。目を見張ったのはそのグレードである。登山用のトレッキングポールから、キャンプで使う焚き火用具など、中古市場でも人気の高い一流ブランド品が出品されている。しかも、フリマサイトの過去の取引価格の5分の1ほどと、相場と乖離した値付けがされている物も目についた。
そんななか、これまであまり扱ったことのない商品が、彼の目を奪う。あるデザイナーズブランドの女性物の財布とカバンが、それぞれ4000円と6500円という手頃な価格で出品されていたのだ。どちらも若干の使用感はあるものの、なかなかの上玉だ。
スマホで検索したところ、定価はそれぞれ約3万円と約5万5000円。フリマサイトを見ても、状態の良いものは定価の6~7割程度の金額で取引されていることがわかった。
「さすが金持ちエリアは違うなぁ」
Sは心の中でそう呟くと、この財布とカバンのほか、トレッキングポールや携帯用ガスバーナー、子供用のスニーカーの計5点、締めて2万2000円分を購入した。
「警察に被害届を出す」
慌てて返金の憂き目に
いつものように帰宅してすぐに写真を撮り、フリマサイトに出品すると、1週間以内にすべて買い手がついた。Sはすぐさま発送の手配をした。
ところがである。財布の購入者から、受け取り評価前にこんなメッセージが届いたのだ。