「購入させていただきました商品を正規店に持ち込んで見てもらったところ、偽物であることがわかりました。至急返品させてください」
全く想定外の内容だ。しかし、考えてみればSも真贋の確認はしていない。
手元に残っているのは、出品用に撮影した数枚の写真のみ。その写真とネットで見つけた正規品の写真を比べてみても、特に不審なところはないように思える。正規店に持ち込んだというのは虚偽で、ただの言いがかりの可能性もある……。
なんと返事をすべきか、数時間悩んでいると、畳み掛けるように再度メッセージが届いた。
「お返事をいただけないようでしたら、警察に被害届を出させていただきます」
そこまで言われれば、もう返事は1つしかなかった。
「申し訳ございません。ご返送いただければすぐに返金させていただきます」
「勝ち組」なはずのタワマンバザーで
偽物をつかまされた皮肉
その後、返送されてきた品物を、Sはリサイクルショップに持ち込んだ。品物の真贋を知りたかったし、値段次第ではそのまま売ってしまおうと考えたからだ。しかし、その財布を手に取った店員は、すぐにこう言った。
「こちらは……。そうですねぇ、当社の規定では、お取引できないお品物とお伝えするしかありません」
「偽物ってことですか?」
そう尋ねるSに、店員は「こちらでは真贋の鑑定をすることはできませんので」と言葉を濁すばかりだったが、偽物と認定されたことは明白だった。
リサイクルショップを後にしたSは、改めて財布に目を這わせてみた。すると、内側に付けられているタグに書かれている日本語のフォントが、少し不自然に思えた。
この財布を購入したバザーの主催者に返品と返金を要求しようにも、バザーはすでに終了している。開催場所の管理者に連絡するといった方法もあるが、Sの手元にはレシートもなければ真贋鑑定書もない。警察に被害届を出すというのも1つの手かもしれないが、4000円の返金を受けるために、そこまで面倒なことをする気も起きなかった。