「将来に希望を抱いている人たちには、ある共通点がありました」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さん。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援もおこなっています。
その金間さんの新作が『ライバルはいるか?』です。社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べ、「誰かと競う」ことが人生にもたらす影響を解き明かしました。挑戦する勇気を得られる内容に、「これは名著だ!」「人生のモヤモヤが晴れた!」との声が多数寄せられています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して、「将来に希望を抱く人たちの共通点」を紹介します。
理解できない「ある調査結果」
今回の研究は大きく分けて、質問票(アンケート)調査を中心とした定量調査と、直接的な聞き取り(インタビュー)を中心とした定性調査からなる。
質問票調査は、2023年12月に株式会社クロス・マーケティングの協力を得て実施した。対象は20代から40代までの社会人、1200人。各年代の男女の人数がほぼ均等になるよう、無作為に選出してアンケートに答えてもらっている。
この質問票調査結果の中でひとつ、理解が及ばないデータがあった。
それは、ライバルが「現在いる」「かつていた」「一度もいない」という区分で回答者を分けた3グループのうち、「かつてライバルがいた」グループの幸福度が最も高いこと。
将来に「希望」を抱いている人たちの共通点
第1章でも見た通り、本研究の質問票調査では幸福度を測る設問を設定している。設問はこうだった。
「あるはしごを想像してください。一番上の10段目があなたにとって最も理想的な状態で、一番下の0が最悪の状態を表します。あなたは今、どの段にいると思いますか?」
じつはこの設問、もう1つ関連した問いも設定している。それがこれ。
「それでは、あなたは5年後、どの段にいると思いますか?」
その結果は、ライバルが「かつていた」グループの5年後の幸福度が明らかに突出していた。
これはライバルが「現在いる」人たちの同回答より9%、「一度もいない」人たちより25%も高い。
事前の予想では、「現在いる」グループが圧勝すると考えていた。実際、他の多くの設問では、そのような結果になっている
にもかかわらず、幸福度だけは「かつていた」の圧勝。彼らの多くは、5年後の自分は今よりずっと幸福だと信じている。これはどういうことなのだろう。
「5年後への期待」が将来を大きく左右する
僕はこの「5年後の幸福度」をとても重視している。人は「自分の将来は今より良くなっている」と思えるかどうかで、今の生き方が大きく変わってくると考えているからだ。
努力とは、将来に対する投資だ。自分の将来が今より良くなると思っていなければ、今努力などできるはずもない。同じことが、リスクテイク行動や、失敗に関する許容度などにも言えると考えている。
将来良くなると思っていないとき、どういう行動をとるか。それは、可能な限りの「今の延長」だ。
新しいことはせず、今の幸福を最大限甘受しつつ、それを維持することに努める。将来の幸福を信じていない以上、さらに幸福度を上げるような行為はリスクであり、無駄だと考える。今の幸福に意識を集中し、今の幸福度を守ることに徹するのは、当然の合理的判断だ。
その点、ライバルが「かつていた」人たちは、自分の将来に対して希望を抱いていた。この結果は、自分の将来を、そしてそのための「今」を充実させるための、有意義な事実と言えるだろう。
(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
書籍『ライバルはいるか?』では、社会人1200人に行った調査や、世界中の論文や研究からわかった「競争」の認識が変わる様々な事実が掲載されています。本書を読めば、「競争」を力に変えて、「充実した人生」を手に入れられるでしょう!
★仕事の満足度が高まる★
★挑戦する勇気をもらえる★
★人生の停滞感を打破できる★
研究者が1200人を調査して解明。
知れば人生が変わる
「競争」の真実!!
誰かと競うことは本当に「悪」なのか?
1200人を徹底調査してわかった「意外な真実」!!
★ベストセラー『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の著者、渾身作!!
現代では「みんな仲良く」が正義とされ、「競争」は徹底的に排除された。しかし、本当に競争は「悪」でしかないのだろうか?
そこで1200人を対象に調査を行い、世界中の研究や論文を調べたところ、驚くべき真実が見えてきた。
「競争」から逃げて、実力を秘めたままでいるか。
「競争」の力を借りて、実力以上を発揮するか。
賢く選ぶために知っておきたい真実を、この本でお伝えしよう。
第1章 ライバルは敵か、味方か―1200人調査で判明した意外な事実
たくさんいる人たちの中で、どこか気になる存在/ライバルは相反する感情をもたらす/1200人のライバル実態調査の結果から/ライバルはどこに現れる?/「幸福度」に関する驚きの調査結果……など
第2章 現代からライバルが消えた理由―こうして日本社会は競争を葬った
「競争相手」のいない世界/競争は、いつから「悪」になったのか?/「みんな仲良く」という時代の副作用/「無菌状態化」する日本企業の職場環境/競争がなくなったことで失われた光景……など
第3章 ライバルの真のイメージ—それは本当にネガティブな存在なのか
負けることは、恥ずかしいことなのか?/1151人が抱くライバルのイメージ/ライバルがいない人ほど、ライバルを「恐れる」/ライバルがもたらす、大切な「ある感情」……など
第4章 ライバルがいるから頑張れる―意欲と満足度に与えるプラスの影響
入社3年目の「社内マップ」/ライバル観の4つのタイプ/なぜ若手にとって「目標型ライバル」は重要なのか?/統計に表れた「ライバルの有用性」……など
第5章 ライバルこそがあなたを成長させる―競争の果てに得る4つの成長実感
スーパー技術者たちの戦い/なぜ勝者も敗者も、同じ感情を抱くのか/ライバルの有無と成長実感の関係/あの人がいなかったらここまで来れなかった……など
第6章 恋のライバルと戦う—敗北は人生に何をもたらすのか
人が恋に落ちる瞬間/エスカレーターの一段に無限の宇宙を感じる/「恋のライバル」という残酷な存在/4人の恋の結末……など
第7章 ライバルの効能を科学する—世界の研究が明らかにした成功との相関
25秒もタイムが縮まったランナー/膨大な先行研究から導き出した2つの有用性/「比較された従業員」が辿る、正の道と負の道/ライバルのいる人といない人、どちらの年収が上か……など
第8章 ライバル意識のダークサイド―敵対心という心の闇との向き合い方
アメリカで出会ったイケメンの友だちと天才/勝たなければいけないという気持ちが行きつく先/「勝利至上主義」の是非とライバルに対する敵意/「足を引っ張る」ことに喜びを感じる日本人/どんな人が現れても、揺さぶられない自分でありたい……など
第9章 自分という最強のライバル—勝者であり続ける人が戦っているもの
ライバル研究「最大の疑問」/「若くして頂点を極めると成長が止まる」は本当か/藤井聡太がダークサイドと決別した瞬間/364日は「過去の自分」の勝ち/過去の自分に勝つ方法……など
第10章 ライバルと手を組むとき―最高のチームが誕生する瞬間
真に「競争から協調へ」が実るとき/「チームの一員としてふさわしいか」というプレッシャー/この世界は個人戦でできている/自分にしかできない何かを見つけるために……など