「強すぎる競争意識は、心に闇をもたらします」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さんだ。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援も行う。
その金間さんが「働くすべての人に届けたい」との思いで書き下ろした新作が『ライバルはいるか?』だ。社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べ、「誰かと競うこと」が人生にもたらす影響を解き明かした。挑戦する勇気を得られる内容に、「これは名著だ!」「もっと早く読みたかった!」との声が多数寄せられている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して、「強すぎる競争意識がもたらす心の闇」を紹介する。

【人生が終わる…】世界の研究が明らかにした。「強すぎる競争意識」にとらわれた人たちが犯した「行為」とは?Photo: Adobe Stock

もし、あなたより「有能」だと
感じる人が現れたら

 想像してほしい。
 今、あなたの目の前に、あなたにとって重要だと思われる能力──それは今の仕事に不可欠な能力かもしれないし、今まであなたが高めてきたと自負する能力かもしれない──を十分に備えた人が現れたとしよう。

 あなたの心の中には、どんな感情が生まれるだろうか?
 そのとき、あなたはどんな行動をするだろうか?

 この問いを皮切りに、ライバルが現れることによって生じる心の「闇(ダークサイド)」に焦点を当てよう。

 人は誰でも「闇」の部分を抱える。それを受け入れた上で、僕らはその「闇」をコントロールしながら生きている。

 しかし強いライバルの出現は、ときにその「闇」を増幅し、心の堤防を決壊させる力を持つ。そんなとき、僕たちはどうしたらいいのだろうか。

「勝たなければいけない」
という気持ちが行きつく先

 ライバルに勝ちたい、という気持ちは純粋なものだ。
 対戦相手が往年のライバルというだけで、集中力が増し、いつも以上の力を発揮することもある。

 海外、とくにアメリカを中心とした先行研究では、主にスポーツを対象としたライバルの効果が盛んに計測されている。

 たとえば、野球、バスケットボール、フットボール、アイスホッケーのプロチームを対象とした研究では、ライバルと目する相手が好成績を収めた翌年、今度は自チームがより高い成績を収める傾向にあるという(Pike et al. 2018)。

 なぜ、このようなことが起こるのか。
 この問いに対し、生理学的な反応をもとに説明した研究がある。