定期外利用の割合が増加
ストックからフローへ

 鉄道の能力を測る指標の一つとして、「輸送人員」というものがある。これは、鉄道が輸送した旅客の総人員数を指すものだ。

 この輸送人員に関して、世界で圧倒的な1位は日本であり、JR東日本は年間50億人超、私鉄なども含めた全鉄道では年間約200億人を輸送している。一方、2位の中国は約30億人、3位のインドは約12億人にとどまる。

 日本の輸送人員が他国と大きく差をつけている理由は、日本が鉄道に大きく依存している国だからだ。鉄道が時間通りに安全に運行することが、日本社会の基盤となっている。その結果、1人当たり年間200回弱(乳幼児を含む)、鉄道を利用している計算になる。

 さらに、輸送人員の具体的な内訳を見ると、通勤や通学に用いる「定期券利用者」と、それ以外の利用者である「定期外利用者」に分かれる。

 定期外利用者について、国土交通省は「観光客」として扱っている。過去40年前は定期券利用者が全体の約7割を占めていたが、20年ほど前から定期券と定期外の割合は6対4に変化した。近年の決算データでは、例えば京浜急行のように、5対5に近づく鉄道会社も出てきている。

 つまり、鉄道は定期券というストックビジネスから、観光利用というフロービジネスに移行しているというわけだ。今後は、この「5対5」が主流となるだろう。

 その変化の背景には、コロナ禍で起きたリモートワークの普及がある。これにより、鉄道会社にとって以前は南極の氷のように溶けることのない分厚い安定収入だった「定期収入」が減少している。かつては収入の7割を定期券利用者から得られたため、経営者は残りの3割に集中すれば事業が成立していた。

 しかし、今後は、自助努力によって観光客などの定期外利用者を積極的に取り込む必要がある時代に突入し、フロービジネスを伸ばさないと生き残れない。そこでかぎとなるのが、デジタル分野での成長なのだ。