大学ランキング上位100位でもアメリカは38校
人口当たりではイギリストップ、日本は低位
ソフトウエアエンジニアなどのハイテク専門家や高度な人材を教育するのは大学だ。だから、報酬が高い先進的地域の大学では高水準の教育が行われていると推察される。
もちろん、人は移動することができるので、先端的な経済活動が行われている地域と高水準の教育が行われている地域が一致する必要はない。しかし実際には、先端的企業は大学の近くで生まれることが多い(スタンフォード大学の周辺にシリコンバレーが成長したのが典型例だ)。
また、国単位で見れば、高度な経済活動が行われるためには、その国に高度の専門家がいることが必要であり、そのためには大学教育が高水準でなければならない。
そこで、大学ランキングにおける高順位の大学がどうなっているかを国別に見ることにしよう。
イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」が発表する「THE世界大学ランキング」の2025年度版(2024年10月に発表)によると、上位100位までの大学(以下「トップ大学」という)の国別分布は、図表2のようになっている。
大学の数も、国の人口が多くなれば多くなる傾向があるので、図表2では人口1000人当たりのトップ大学数も示した。
これを見ると、日本が極めて低い位置にあることが分かる。そして、図表1と2で、人口当たりの数字は似通った分布になっている。つまり、企業のパフォーマンスと高等教育の水準の間には強い相関関係がある。
なお、世界大学ランキングとしては、「QS世界大学ランキング」もある。24年6月に公表された25年版では6位までは全て英米の大学が占めた。
日本の大学は、東京大学が32位、京都大学が50位、東京工業大学が84位、大阪大学が86位となり、4大学がトップ100位以内に入った。そうであっても、図表2に見られる大勢は変わらない。
大学への交付金は削減され
半導体企業誘致の補助金は膨張
日本で最先端の経済活動が行われるためには、日本の大学の水準を引き上げることが不可欠だ。そのためには研究活動などへの投資が重要だ。
では、どの程度の資金が投入されているか?
国から国立大学に配分される運営費交付金は、24年度は1兆784億円。20年前に比べると約13%の減少だ。最近では物価高騰のため大学の運営がますます苦しくなっている。
ところが一方では、半導体のために巨額の補助金が民間企業に支出されている。台湾の半導体製造会社TSMCの工場を熊本に誘致するために、数千億円の補助金を支出した。また半導体製造会社ラピダス1社に対して、1兆円を超える予算が計上されている。
これらと、毎年度、継続する大学への運営交付金とを単純に比較するわけにはいかないが、日本は基本的な点で途方もない間違いをしているという懸念を捨てることができない。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)