半導体 最後の賭け#11Photo:Mario Tama/gettyimages

1980年代に世界市場の過半のシェアを握り、栄華を極めた日本の半導体。だがその後、日本陣営は凋落し、半導体の技術者たちはリストラされたり、人によっては5000万円もの年収を提示されて外資企業に転職したりして散り散りになった。半導体の再興を目指す国策会社であるラピダスは、採用予定の日本のトップ技術者が並ぶ「100人リスト」を作成し、エンジニアの再結集を目指している。特集『半導体 最後の賭け』の#11では、半導体技術者の転職事情や外資メーカーとの給与格差などを明らかにする。果たしてラピダスに技術者は戻ってくるのか。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

年収5000万円で中国企業からの引き抜き
半導体技術者の「世界争奪戦」

 先端半導体の製造を目指す国策会社であるラピダスには、補助金や出資金を集めるための「切り札」があった。

 それは、先端半導体の量産に当たり、同社が段階的に採用していく日本のトップ技術者「100人リスト」である。国から予算を引き出すため、ラピダス幹部(東哲郎会長や小池淳義社長)が経済産業省や政治家に示していた同リストには、技術者の氏名や所属企業が記載されていた。

 このリストに名前が載ることは技術者として名誉なことだ。しかしその半面、リストの中身は、ある意味で日系半導体メーカーの衰退の歴史を象徴している。リストにある技術者の勤務先は外資系企業が多く、50代以上のシニア層がメインなのだ。

 それもそのはず、東芝やルネサスエレクトロニクスなど日系の半導体メーカーは壮絶なリストラを行い、若手の採用を減らしてきた。他方、韓国のサムスン電子や中国の紫光集団などは高額報酬で日本の技術者を採用し、技術移転を図ってきた。

 次ページでは、散り散りになった「技術者の転職動向」や「外資メーカーとの給与格差」などを解明する。