医療IT業界の「勝ち組銘柄」は?エムスリー、JMDC、ケアネット…二極化&合従連衡が進行中!Photo:Yuichiro Chino/gettyimages

人手不足や医療財政が逼迫する中、存在感が増している医療ITセクター。オンライン診療や医療機関・薬局のDX、治験など市場も拡大している。一方、成長市場だけに競争は激しく、M&Aによる陣取り合戦も活発化。足元では業績、株価とも二極化している。特集『医療機器 21兆円への挑戦』の#13では、製薬マーケティング支援、医療データ利活用の「2強」を中心に、業績と株価にアップサイドのある医療IT銘柄を探した。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

医療介護求人サイトが堅調の
メドレーは30%成長継続を狙う

 医療関連銘柄というと製薬企業や医療機器メーカーが注目されがちだが、近年存在感が高まっているのが医療IT銘柄である。世界的に医療財政が逼迫する中、医療業界もDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上が待ったなしの状況であるからだ。

 実際、縮小均衡が続く業界がある中で、医療ITセクターでは雨後のたけのこのごとくベンチャー企業が誕生。M&A合戦も活発になっている。

 だが、成長市場ほど競争が激しいのは世の常である。さらに「コロナ禍バブルの崩壊」が追い打ちをかけ、業績や株価は二極化している。

 下表は、本特集の#11『医療機器・IT関連104銘柄を分析!勝ち組17社のうち「株価に織り込まれてない伸びしろ」がある銘柄を公表!テルモ、マニーは?』でも紹介した医療機器や医療器具、医療関連サービスなどを展開する企業104社の中から、前期実績および今期と来期の市場予想が増収増益の17銘柄をピックアップしたものだ。来期の市場予想の増益率が高い順に並べている。

 医療ITからは、メドレー、JMDCなどがランクインした。1位のメドレーは医療介護求人サイト「ジョブメドレー」が堅調だ。主力事業で稼ぎつつ、オンライン診療や電子カルテ、薬局支援システムなどの事業も強化している。

 メドレーは新中期目標として2029年度に売上高1000億円、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)200億円を打ち出しているが、これはCAGR(年平均成長率)30%に相当する。野心的な計画ではあるが、前中期目標は前倒しで達成見込みであり、実現可能性は十分にあるだろう。

 一方、日本を代表するグロース株として医療IT業界をけん引してきたエムスリーはランクインしていない。詳しくは後述するが、エムスリーは稼ぎ頭の事業が失速したことにより2期連続で減益に沈み、株価は高値から8割以上も下落しているのだ。

 東海東京インテリジェンス・ラボの吉田正夫シニアアナリストは「医薬DXの市場拡大ポテンシャルは大きいが、短期的にはMR(医薬情報担当者)の削減が一部サービスの減少につながる」と指摘する。果たして業界の序列は変わるのか。

 次ページでは、医療IT業界の業績や株価を動かす強弱材料を解説。再加速を目指すエムスリー、医療データで躍進するJMDCなど具体名を挙げながら医療ITセクターの本命企業を解説する。