コンサル大解剖Photo:PIXTA

日本国内でのプライベートエクイティ(PE)ファンドの台頭を受け、コンサルティングファームなどで経験を積んだ人材が、次の職場としてPEファンドを選ぶ動きが出ている。では、PEファンドで生かせるコンサルタントのスキルとは。また、転職によって待遇はどう変わるのか。『コンサルが「次に目指す」PEファンドの世界』の著作があり、PEファンドへの転職を数多く支援してきたアンテロープキャリアコンサルティングの小倉基弘代表取締役と山本恵亮取締役に解説してもらった。長期連載「コンサル大解剖」の本稿では、後編として、両氏がPEファンドの職位構造や職位別の報酬額について解説。PEファンドに転職したコンサル出身者の経歴や転職で、年収がどのぐらい増えたかの事例も紹介する。

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PEファンドの職位は3階層
特徴的な報酬「キャリー」とは

 PEファンドで働く投資担当者の職位構造は大きく分けると、幹部と中堅、ジュニアの3階層があります。上から幹部はパートナー(またはマネージング・ディレクター〈MD〉)、中堅はディレクター(またはプリンシパル)、ヴァイス・プレジデント(VP、またはマネージャー)、そしてジュニアは、アソシエイト(またはシニア・アソシエイト)、アナリスト(またはアソシエイト)です。

 ジュニアは、ビジネスデューデリジェンス(BDD)やレバレッジド・バイアウト(LBO)のモデリングなどの作業が中心となります。投資家に説明する資料の作成を受け持つなど作業量の多い立場です。中堅は、ジュニアの仕事を監督するポジションで、投資実行後のバリューアップ段階では、ジュニアを使ってプロジェクトマネジメントを進めます。

 幹部は、ファンドの統括責任者です。投資家の信用を得て、資金調達をすることもパートナーなどの重要な役割です。PEファンドでは、一通りの業務をできるようになるまで10年ぐらいかかるとされています。つまり、未経験者は10年ほどかけてパートナーの地位を目指していくことになるのです。

 PEファンドの報酬体系を見ていきましょう。まずベース年俸と賞与があります。そして、特徴的なものが、ファンドがクローズしてリターンが出たときに配分される「キャリー」です。

 キャリーの原資は、最終的なキャピタルゲインから投資家への分配などを除いた金額になります。例えば、100億円の回収資金のうち20%ほどの分配を受けることになるとすると、分配金は20億円。投資担当者が10人いれば、1人当たり平均2億円となります。

 ただ、分配金は貢献や職位で傾斜配分されることが一般的のようです。一番下のアナリストは相対的には少ない配分となりますが、それでも数千万円ほどのキャリーを得ることもあります。もちろんファンドの投資期間は7~10年ほどのため、キャリーが得られるのは5~7年に1回ほど。つまり、転職者はPEファンドに入社して初めてキャリーを受け取るまで5年ほどかかるのです(他に、個別の投資案件ごとにリターンが出た時にキャリーを配分する制度を持つ会社もあります)。

 次のページでは、一般的なPEファンドでの職位別の報酬額について解説します。また、実際に、PEファンドに転職したコンサル出身者や総合ファーム系のファイナンシャル・アドバイザリー・サービス(FAS)出身者の経歴や年収の事例も紹介していきます。20代後半で、キャリーを除いたベース年俸と賞与だけで報酬が2000万円アップした事例もあります。