建機メーカーにとって、鉱山機械の市場が膨らんでいる。地政学リスクに伴う資源価格高騰により需要が拡大しているためだ。資源開発は総合商社が得意とする領域でもある。利を追い掛ける商社が、成長を続ける巨大市場に目を付けないわけがない。鉱山機械業界には世界最大の建機メーカー、米キャタピラーが君臨しているが、近年コマツは肩を並べつつある。特集『建機 陥落危機 メーカー&商社“背水の陣”』の#5では、キャタピラーの力量と、相対するメーカーと商社の戦略を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎、猪股修平)
「鉱山機械」市場は各社が血眼で掘り進める鉱脈だが
日系建機メーカーはガリバーに勝てるのか?
コマツの鉱山機械の売上高は直近8年で2倍近くに伸び、2023年度の売上高全体の半分近くを占めるまでになった。日立建機も23年度は鉱山機械が売上高全体の2割を占める。
鉱山機械の魅力は成長性だけではない。建機と比べて、利益率が高いのだ。24時間常に稼働することもある鉱山機械は維持管理にかかる費用が高く、新車販売した後に部品交換などのアフターサービスで得られる利益が大きい。
総合商社も市場に熱視線を送る。三井物産は23年11月、コマツがペルーに持つ鉱山機械販売会社の株式を60%超取得し、子会社とした。三井物産は中南米や豪州で鉱山事業の主体として投資をしており、鉱山会社側の視点からコマツと連携できる点で強みを持つ。株式の取得でより密接に鉱山事業に関わる考えだ。
同社の産機・建機関連事業の持ち分利益は23年度で191億円、24年度は上期だけで100億円を超える。内訳は明らかにしていないが、同社関係者は「主力は鉱山機械だ」と明かす。
技術力の面でプレーヤーが限られているのも鉱山機械市場の特徴だ。中国メーカーは建機市場で著しい躍進を見せているが、現状では大型の鉱山機械の開発まではこぎ着けていないのだ。
市場規模が大きい上、継続して成長が見込める鉱山機械は、建機メーカーのシェア争いのまさに「天王山」だ。ここを伸ばせるかどうかがメーカーの趨勢そのものを占うと言っても過言ではない。次ページでは米キャタピラーとコマツ、日立建機の鉱山機械の売上高の推移を比較しながら各社の戦略を明らかにする。