この前提が崩れるかどうかで、今、AI株がけん引している株式市場がどう動くのかがこの後はっきりしていきます。
DeepSeekが引き起こすかもしれない
経済の問題は3つある
ちょうど直近でメタが2025年にAI関連プロジェクトに650億ドルの研究開発投資をすることを表明しました。日本円にして10兆円です。そこから概算すればGAFAMだけで年間50兆円の投資が行われるわけです。
これまでの前提では巨額の投資がAI開発には必要で、それができるGAFAM級の大企業だけがこの世界で勝ち残れると考えられてきたものです。
そしてその投資の多くはAIの学習に必要なデータセンター設備への投資資金となり、データセンターはサーバーに搭載するエヌビディアの最先端GPUを購入します。
エヌビディアの直近1年間の売上高は日本円にして約18兆円に膨れ上がっているうえに、来年、再来年はさらに売り上げが増えることが当然のように予想され、エヌビディアの株価は高騰していたのです。
ところがDeepSeekは会社設立から2年弱なのに、エヌビディアの型落ちのGPUを用いて約8億円の開発費でChatGPTのo1と同じ性能のAIを開発して発表してしまいました。
そしてDeepSeekが現実に目の前にあるということが一番のショックです。
DeepSeekは誰でもダウンロードできて、誰でも使えます。使ってみると性能がいいことがすぐにわかります。しかも運用コストも安い。ChatGPTなどのアメリカ製AIと同じ分量の大量情報を出力させた場合でも、利用コストは4%以下の金額で収まると推定されています。
経済の視点で整理するとDeepSeekが引き起こすかもしれない経済の問題は3つです。
(1)学習の際に必要な計算能力が劇的に少なくてすむため、これまで想定されていたような規模でのデータセンターや電力設備の新規建設が必要でなくなるかもしれない
(2)推論の際の計算能力も劇的に少ないらしい。おそらく端末側の半導体もそれほどの性能がなくてもAIが使えるようになりそう
(3)結果、劇的に安い価格でAIが流通するようになる
この3つの問題提起が正しい場合、AIをめぐるこれまでのビジネスの前提が根底から覆ってしまいます。