製作費100万円以下!「超低予算映画」の異常なやりがい搾取、監督が自腹を切るケースも写真はイメージです Photo:PIXTA

映画製作関連のワークショップは映画監督を目指す人や、俳優が演技を学べる場として人気が高い。一時は予算100万円以下で作られる“超低予算ワークショップ映画”が隆盛を迎えた。俳優や業界志望の参加者たちは受講料を払い「監督やプロデューサーと知り合いになれるかもしれない」「仕事がもらえるかもしれない」という期待を抱いて臨み、実際に映画を制作する。しかし、長年映画監督として業界に身を置く深田晃司氏は、この手法を「典型的なやりがい搾取」と断言する。そのいびつな仕組みとは。※本稿は、深田晃司氏『日本映画の「働き方改革」現場からの問題提起』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。

オーディション文化が根付かず
俳優向けワークショップが増加

 いわゆる美大や映画学校などの教育機関とは異なり、広く一般で行われている分、実態が不透明なのがワークショップである。

 ワークショップとは、直訳すれば研修会や講習会で、いわゆる「参加・体験型の講座」である。日本においても近年各分野で盛んに行われ、特に映画業界においては俳優向けに有料で演技を学べる場として人気が高い。

 こういったワークショップが隆盛する背景には、日本における俳優教育が乏しくその補填となっていることや、オーディション文化の未普及が挙げられる。

 後者について補足すると、日本にはたとえばアメリカと比べオーディション文化が根付いていない。特に大作映画になると、主演クラスでオーディションが行われることはまずなく、直接的なオファーによって配役が決まっていく。そして、主演に決まった芸能事務所から「バーター」という形で、傍の役のキャスティングが決まっていくこともある。裏を返せば若い俳優たちがキャスティングのチャンスを掴む機会は非常に限られていて、ワークショップはそんな俳優たちと監督たちが出会える場になっている。

 俳優に演技を教えるのは本来であれば演技の専門家である俳優やアクティングコーチであるべきだと個人的には思うが、日本のワークショップが演出家や映画監督に偏るのは、そのほうが需要を見込めるという主催側の思惑もあるのだろう。なかにはあからさまに「映画業界人と知り合いになれる」「何らかの役につながるかもしれない」と、射幸心を煽るような宣伝文句を謳うワークショップもある。