
日本映画界にオーディション文化が根付いてないことや、制作費の低予算化によって人気を博した「ワークショップ映画」。それらは映画監督が「講師」を務め、応募してきた俳優が「生徒」として参加するケースが多く、監督やプロデューサーは“選ぶ側”であり、俳優は“選ばれる側”という「権力勾配」が根底にある。結果、パワハラ・セクハラにつながりやすい世界となっているが、はたして、防ぐ手立てはあるのか?映画監督の深田晃司氏が、業界を変える方法を提言する。※本稿は、深田晃司『日本映画の「働き方改革」現場からの問題提起』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
生徒側もハラスメントの知識が必要
被害に遭ったら相談窓口へ
日本においてはワークショップをキャスティングへの期待感と結びつける傾向が強く、結果としてそれに携わる講師、映画監督やプロデューサー、演出家に過剰な権力を与えることになった。実際にその権力勾配につけ込む一部の講師や関係者によって深刻なパワハラやセクハラ、性被害が起きている。
本来、ワークショップそれ自体に問題があるのではなく、真っ当に運営されているケースももちろんある。今後ワークショップをより健全な教育の場とし、信頼性を高めていくために、3つの提言を記しておきたい。
(1)ハラスメント防止策の徹底。講師へのハラスメント講習の実施、ガイドラインの設置、また生徒への相談窓口の周知。
これはすぐにでも行える対策で、実際すでにいくつかのワークショップで実施されている。講師への教育は必須で最も重要であるが、ハラスメントを受ける生徒の側への最低限の知識の伝播もまた重要である。もちろん問題は加害者にあるが、何がハラスメントに当たるかの知識がないままだと、たとえ不快な行為を受けたとしてもそれを被害であるとさえ認識できず、心身を守れないままダメージが蓄積されていくこととなる。気がついたときには深刻な精神疾患に至ってしまうケースもある。