「輸入紙が安くなっている。特に一部品種では国内の製紙メーカーが太刀打ちできない価格差になっている」(大手代理店幹部)

 景気悪化によって大幅な需要減退に見舞われている製紙メーカー。大規模な減産や生産設備の廃棄にまで踏み込むメーカーもあり、最終損益が赤字に転落するところも出てきた。それに追い打ちをかけているのが輸入紙だ。円高という追い風もあって輸入紙は急速に増加しており、市況の混乱を深めている。

 輸入紙が存在感を出し始めたのは昨年末。複数の海外製紙メーカーが大幅な値下げを打ち出して受注獲得を始めたのだ。今回、値下げの対象となったのは塗工紙、微塗工紙と呼ばれる印刷用紙で、新聞の折り込みチラシや、カタログなどに使われる光沢のある紙だ。

 A3コートと呼ばれる、分譲マンションなどの高級チラシに使用される紙の場合、海外メーカーは一キログラム当たり105~110円で販売していたが、昨年末頃から100円に値下げをした。通信販売会社などスポットで大量にカタログ用の紙を買い付ける需要家に対しては90円台という安値も登場。国内メーカーは現在、115円程度なので、その差は歴然としている。大手製紙メーカーはこうした品種のシェア確保は、すでに諦めているという。

 当然、輸入紙のシェアは1月以降、急速に高まっている。昨年までは輸入紙トータルで5%程度だったが、1~4月の塗工紙輸入が19万トンと前年同期の2.5倍に達したことで、塗工紙における輸入シェアは10%を超えた。

 国内の大手製紙メーカー4社は2007年から相次いで大型製造マシンを稼働。大半を海外に輸出するとしていたが、その環境は円高により悪化。1~4月累計の輸出量は18万トンと前年同期比で半減してしまった。むしろ輸入紙に押されている状態で、そのため多くの新設マシンは開店休業状態にある。各社は戦略の見直しを迫られている。

 ある大手メーカー幹部は「製紙メーカーは学習能力がなく、市況が悪化しているときにも生産を続けて自分の首を締めてきた業界。今回は各社とも減産をきちっと行なっているが、抜け駆けするメーカーがないことを祈りたい」と苦しげに語る。

 この需要低迷が長期化すれば、再び量を追い求め、安売りするメーカーが出てきて、市況が悪化する可能性もあり、業界再編が加速するかもしれない。実際、3月には北越製紙が紀州製紙を傘下に収めると発表している。業界再編の足音がひたひたと聞こえてきたようだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)