すなわち「(1)キミの邪魔をしたくて『やめておけ』と言う人(2)よく分からないから『やめておけ』と言う人(3)過去の経験から『やめておけ』と言う人(4)現在の経験から『やめておけ』と言う人」だ。このうちドリームキラーに当てはまるのは(1)~(3)である。(4)のタイプは実際に手を動かしており、現在の経験によって得られた知見からブレーキをかけている。そういう人のアドバイスは聞いて損はないが、残りの人々の話は聞いたところで「やめる」という決定しか導き出すことができない。

周囲からの嘲笑をバネに
成功体験を積み上げる

 ルビッチの周囲にいるのも彼に対して無理を突きつける人々ばかりである。これは、西野が生きてきたお笑いの世界そのものであると同時に、周囲を含め少なくない人々が経験してきた、馬鹿にされたり、笑われたりした経験とリンクする。座付き作家となった山口トンボにしても、作家になると宣言した当初は馬鹿にされていた。キングコングがいない収録現場で、「落ち目の芸人についてどうなるのか。仕事がないのならば頼る先は西野ではない」「お前、西野につくなんて、どろ船に乗ったな」などと言われても「ははは」と笑ってごまかすことしかできなかったという経験がある。

 山口のような人々が西野のフォロワーには決して少なくない。

 西野はテレビの世界と距離をとっていたゼロ年代に、初めて共感の糧を手に入れたように思える。デビューから一気に成功という物語ではなく、業界のなかで理解もされずにうまくもいかないだろうと思われていた経験と、夢を笑われたことを見返す物語として、である。

 2013年、当時の芸能人にしては異例ともいえるタイミングでニューヨークでの個展開催を目指して、クラウドファンディングに打って出た。今でこそ決して珍しくない方式だが、西野にかけられたのはやめたほうがいいという言葉だった。「信者ビジネス」という批判を浴びたのも異例の早さだったところもまた西野らしいとも言えるが、いずれにせよ順風満帆な生活は終わりを告げた。そして、彼は見返すように成功体験を積み上げる。

 それこそまさに「西野エンタメ」のプロットそのものだ。