この基準に従えば、95%の物事は拒否すべきということがわかるはずだ。「絶対にやりたい!」と思えることなんて、めったにない。たいていは、「もしかしたら役に立つかもしれない。ちょっと面白そう。なら、やってみるか」という程度のものだ。
脳はこんなふうに、何かをやることを正当化しようとする。でも、物理的にそれをやる時間がないのなら、脳の声に従うべきではない。すでにどれだけ多くのことを抱え込んでいるかをよく考えよう。「絶対やりたい!」と思えないのなら、やる価値はないと見なせばいい。
もう1つの方法はさらに簡単で、ちょっとした視点の変化、いわゆる「リフレーミング」を用いたものだ。具体的には、経済学で「機会費用」と呼ばれるものについて考えることだ。機会費用とは、何らかの選択肢を選んだときに、その対象に投じる時間とエネルギーを使ってできたはずの他の選択肢の価値のことである。
今は予定のない暇な「6週間後」も
やがて多忙な「明日」となる法則
たとえば、同僚から追加の仕事を頼まれたとする。もしあなたの目標が昇進や昇給で、その仕事を担当するのがそのための手段であるなら、答えは「イエス」なのかもしれない。でも、それによって失われるものがあることにも目を向けなければならない。子どもと公園で遊ぶ時間や、久しぶりに友人に会う時間、じっくり眠る時間などが、犠牲になるのではないだろうか。
最後に、「ノー」と言うことが持つ力に関する世界有数の専門家であり、「フォーチュン500社」のCEOやリーダーのアドバイザーでもあるジュリエット・ファントがおすすめする方法を紹介しよう。ファントは『WHITE SPACE:仕事も人生もうまくいく空白時間術』(東洋経済新報社)の著者で、考えるスペースをつくることが持続可能な生産性の秘訣であると主張している。
僕はこの本のために彼女にインタビューし、「あなたの研究の中で、最も実践的かつ実行可能なものは何ですか?」と尋ねた。彼女は「6週間の罠」という現象について教えてくれた。