ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

企業がデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織を変革する取り組みを指す「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」。多くの日本企業がDX導入を試みているが、マネージャーによる部下の管理方法が時代にそぐわず、DX化を阻んでいるという。リーダーシップを専門とする経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏が、日本人マネージャーが抱える問題点について解説する。※本稿は、ロッシェル・カップ氏『DX時代の部下マネジメント-「管理」からサーバント・リーダーシップへの転換』(経団連出版)の一部を抜粋・編集したものです。

日本人マネージャーが
アメリカでうまくいかない理由

 私は20代の時に日本企業の本社で働き、グローバル化に伴うマネジメントの難しさを肌で感じていました。その後、アメリカに戻ってMBAを取得した後に、経営コンサルタントをはじめました。現在、顧客の約80パーセントを日本の企業が占めており、その業界は、自動車や自動車部品、電器・電機、金融、製薬、IT、商社と多岐にわたっています。

 顧客企業に対して、社内コミュニケーションと人事管理に関するコンサルティング、企業内研修、チームビルディング、そしてコーチングなどを提供するとともに、それに関連したサポートが主な業務内容となっています。

 コンサルタントとして会社を設立した当初の仕事の対象は、主に在米日本人駐在員と彼らの部下であるアメリカ人でした。その後、会社の規模が大きくなるにつれ、ヨーロッパやメキシコに拠点を置く日本企業にセミナーを提供したり、日本で外国人の部下を管理している日本人向けのセミナーを手がけるようにもなりました。

 取り扱うテーマも、最初はコミュニケーションスタイルや個人主義対集団主義のような文化の違いが主でしたが、日本のグローバル企業が直面している問題の原因はそれだけではないと考えるに至りました。海外赴任者としてアメリカなどに派遣された日本人マネージャーのマネジメントに関する考え方や経験とスキルが、現地で採用されている従業員の期待するものと異なり、誤解や失望につながるケースをたくさん目にしてきたからです。

 そのようなアメリカで観察した日本人マネージャーの特徴は、実は日本においても問題になっていることに気づき、近年では外国人部下だけでなく、日本人の部下を管理している日本人に対してもマネジメントスキルとリーダーシップに関する研修を提供しています。

日本人マネージャーの
管理スタイルは時代遅れ

 マネージャーとしてのスキルの欠如は日本人同士でも大きな問題になっています。従業員のモチベーションの低さに悩んでいる日本企業が多いのですが、その原因のひとつは、多くの日本人マネージャーが用いている管理スタイルが時代遅れになっていることにあると思われます。