ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

「気分を良くして生産性を上げる方法」をYouTubeで発信し続けるアリ・アブダール氏。彼は競争が激しかった医学部時代、周りの学生たちはライバルではなく“志を同じくする仲間”と考えるようになり、心の支えに変わったという。ある実験では、周りの人々を「仲間」と見なすことで、人は物事に意欲的にチャレンジできるようになるという結果も得られている。「仲間」を持つメリットについて解説する。※本稿は、アリ・アブダール著、児島 修訳『feel good 快適な努力で最高の成果を上げる方法』(東洋館出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

一緒にいると嫌な気分になる人は
「エネルギーの吸血鬼」である

 一緒に過ごしたり、働いたりするだけで、元気が湧いてきて、「何でもできる」という気持ちになる人がいる。こちらの気分を高揚させ、力を与えてくれる。誰でも、そんな人のそばにいたいと思う。

 一方、関わる度にこちらが消耗してしまうような相手もいる。一緒にいると気分が落ち込み、やる気も失せてしまう。誰だってそんな人とは距離を取りたいと思う。

 僕の友人は後者の人たちを、「エネルギーの吸血鬼」と呼んでいる。他人から生気を吸い取り、周りを疲れさせる。吸血鬼にたとえるのは少しばかりきついし、空想的かもしれないが、一理はある。

 科学者たちはかなり以前から、「関係性エネルギー」の存在、つまり人間関係が人の気分に大きな影響を与えるという事実に気づいていた。心理学教授のロブ・クロス、ウェイン・ベイカー、アンドリュー・パーカーは、2003年の研究で「エネルギーマップ」という概念を考案した。

 彼らは、大手企業数社のコンサルタントや管理職と協力して、従業員がどんな組み合わせで仕事をしているのかや、ある従業員が他の従業員のエネルギーレベルに与える影響を調べた。その結果、こうした大規模な組織でさえ、誰が周りに活力を与えているか(あるいは、周りを消耗させているか)は、従業員のあいだで驚くほど意見が一致していた。近くにいるだけで、周りの人を最悪の気分にさせている従業員がいることもわかった。

 それ以来、関係性エネルギーは組織科学で大きな注目を集めた。関係性エネルギーは「他者との交流の直接的な結果として経験される、ポジティブな感情や十全さが高まる感覚」と定義され、2010年にはわずか8件だった研究件数は、2018年には80件近くに増えている。