これは、人は6週間ほど先の空白の多いスケジュール帳を見て、「この時期なら大丈夫」と予定を簡単に入れるが、実際にその日が近づくと、他の予定が埋まっており、うかつに「イエス」と言うべきではなかったと後悔するというものだ。

 ファントが提案する解決策は、数週間後の予定を入れるときに、「もしこれが明日のことなら、私は喜んでイエスと言うだろうか?それとも、先のことだから安請け合いしているだけなのだろうか?」と自問してみることだ。

 僕たちはつい、「6週間後なら、スケジュールに余裕があるはずだ」と考えたくなる。だが、実際にはそんなことはない。6週間後になったら、それは今日と同じように忙しいはずだ。「明日でもやるか?」と考えたときにイエスと思えないのなら、いくらその予定がずいぶんと先のことであったとしても、イエスと言うべきではない。

多くの人が勘違いをしている
人の脳とマルチタスクの関係

 次のエネルギー節約の方法は、2つの事実に基づいている。1つは、よく知られているように、人間はマルチタスクが苦手だということ。もう1つは、あまり知られてはいないが、人間はマルチタスクが苦手だという事実は少しばかり誤解されているということだ。

 僕はこのことを、2012年にコンピュータ科学者のレイチェル・アドラーとラクエル・ベンブナン=フィッチが行った研究から学んだ。

 2人は実験で、被験者にコンピュータ上で、数字(数独)パズル、単語パズル、間違い探しなどの6つのタスクを行わせた。

 被験者は2つのグループに分けられた。マルチタスクを行わないグループでは、被験者はそれぞれのタスクを順番に1つずつ行う。つまり、まず数字パズルを終了してから、次に単語パズルに取り掛からなければならない。マルチタスクを行うグループでは、画面に6つのタスクごとのタブが表示され、被験者はタブをクリックして自由にタスクを切り替えながら作業を行える。