これからマンションを買う人が
中古マンションに目を向けるべき理由
需給バランスと言う場合、価格の形成は需要曲線と供給曲線の交点で決まるが、これは市場を説明するための学者の方便で実態市場を説明できるケースはほぼない。スーパーで買っているいつもの商品が値上げしていると隣の安い商品を手に取るかもしれないが、不動産はそんな風に購買行動を臨機応変にはできない。立地も違うし、面積も間取りも違うし、その上で価格も違っていて、日常の行動の様に慣れてはいない。
また、需給バランスが崩れるという人は需要曲線を描いたことがない。そもそも需要曲線自体を知らない可能性は高い。私は不動産事業者にコンサルティングをする仕事柄、需要曲線を描くケースが多い。新築マンションの面積帯分布(アロケーションと言う)を決めたり、需給バランス予測を求められてやっている。需給が悪化すると、販売期間が延び、来場した顧客にこっそり値下げを打診して売ることになる。売る側の利益率が下がるが、表ざたで価格が下がることはない。
マンションの需給バランスはエリア毎の価格帯別需要分布と集客範囲から、ほぼ説明できる。需要分布は購入側の予算であり、集客範囲は検討エリアである。私たちは、住まいサーフィンの31万人の会員がどこに住み、どの物件を検討しているか数字で把握できる。ここから分かることは、郊外に行くと集客範囲が狭くなることだ。都心物件は広域に集客できるが、郊外は周辺しか検討する顧客がいない。6000万円以上の予算の顧客が年間100人しか生まれない郊外の駅で300戸供給したら、丸3年の販売期間がかかるだけだ。これはどんな大手がやっても同じことになる。
25年は新築マンション価格が建築費等でさらに値上がりし、中古マンションも連れ高になる。しかし、郊外ほどその価格についていける需要がなく、集客範囲も狭い。都心でも駅から遠かったり、周辺環境が悪い立地は同じことが言える。こうした物件の売れ行きは悪化する。悪化すると、販売戸数が減る。販売戸数が減ると販売期間が延びるだけでなく、次の新築物件の供給時期も遅れる。こうして、25年の新築販売戸数は大きく下がり、2万戸割れが現実になる可能性が出てきている。これから購入を検討するならば、新築偏重の時代はもう終わっていることを認識し、中古マンションを中心に検討した方がいい。マンションの資産性(値落ち幅)は築年に関係なく、都心・駅近といった立地で決まるのだから。
(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)