販売戸数が多く立地が分散
中古市場の方が新築より信頼度が高い
では、どのように売れ行きを判断するかと言うと、私たちは中古市場を見ている。不動産業者間の共有データベース上の首都圏の中古マンションの販売戸数は3万7222戸(これも成約登録された分だけで他にも成約は多数ある)で既に新築よりもはるかに多い。そして、その立地は分散しており、単純に集計や平均しても分布が大きく変わることがないので前年比なども実態把握に役立つことが多い。
中古の2024年市場は、販売戸数が前年比3.4%増、平均価格6.9%増、これらを掛け合わせた売上総額は10.5%増、在庫戸数は前年比2.9%減で、明らかに売れている。新築は売れ行きが悪化したが、中古はその逆ということだ。売れ行きの実態はあくまで中古の方が統計的には信頼度が高い。しかし、難点は新築の不動産経済研究所のように、定期的にニュースに取り上げられないことだけだ。
前回の記事(「都心3区のマンション」でも今年は安心できない?「値下がりしない物件」の選び方とは)で書いたように、実態と報道が乖離する中、23年3月の首都圏の平均新築価格が1億4360万円となった報道を受けて生まれた「にわか投資家」はこれでかなり減る可能性が出てきた。年率10%以上で上がってきた相場は、直近はこうした買い手に支えられていた。
問題はここからだ。マンション価格が暴落するという論者がいるが、当たった試しがない。新築マンション価格は用地価格と建築費の足し算で決まると私は説明しており、用地価格はデベロッパーへの資金の流れで判明する。その資金の流れは金利上昇する中で増えている。金利が上がっても借入意欲が最も強い業界は不動産であり、金融機関も貸し出し先を必要だからだ。これに加えて鉄筋コンクリート造の建築費はゼネコンが営業赤字を出すほどの状況であるために急騰している。この価格形成に、需給バランスはどの様に関与するかというと、緩んでも下がらず、ひっ迫すると上がることしか過去に起きていない。リーマンショック時に多くの中堅以下のデベロッパーが倒産し、現存する売る側の財務体力が上がった現在、大手が値下げして売り急ぐことなどしていない。