0.25%ポイントの利上げによる中小企業の
純利息収入の経常利益対比
![日銀の利上げによる影響は世代間と企業規模で異なる、30~40代と中小企業に悪影響](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/f/b/650/img_fb0639984d7858ca9f0688e270be6681111603.jpg)
日本銀行は2025年1月の金融政策決定会合で、政策金利を0.50%程度に引き上げることを決定した。この決定により政策金利は08年以来の高水準に達している。大和総研では、政策金利は当面の間半年に1度程度のペースで、0.25%ポイントずつ引き上げられると想定している。
今後も政策金利が引き上げられると、家計では住宅ローンなどの利払い負担が増加する一方、預金金利の上昇などを通じて利息収入も増加する。大和総研では0.25%ポイントの政策金利の引き上げによって、家計の純利息収入(利息収入から利払い負担を引いた値)は0.2兆円程度増加するとみている。家計全体では負債より資産が多いためだ。
しかし、全ての家計に恩恵があるわけではない。世帯主の年齢別に見ると、資産を多く抱える60代以上の世帯では純利息収入が大幅に増加する一方、住宅ローンを多く抱える30~40代の世帯では減少し、負担がとりわけ大きくなりやすい。利払い負担の増加がこれらの世帯のマインドを一段と悪化させ、個人消費を下押しするリスクには警戒が必要だ。
企業部門の純利息収入は0.7兆円程度減少し、利上げによって負担が増加するとみられる。企業では有利子負債を多く抱えていることが背景にある。
ただし、利上げによる負担の度合いは企業間でも一様ではないことに注意が必要だ。大企業では純利息収入の経常利益対比が▲0.6%だが、中小企業では同▲1.0%と試算される。大企業と比較して中小企業では有利子負債が多い傾向にあることや、コロナ禍以降の経常利益の回復が鈍いことも影響しているとみられる。
日本労働組合総連合会(連合)は中小企業に対して、大企業を上回る6%以上の賃上げを求めている。利払い費に加えて人件費の増加という側面からも、中小企業を取り巻く環境は今後一段と厳しくなるだろう。この状況を乗り切るには、中小企業がコストの増加分を販売価格に転嫁できる環境を官民一体となって醸成することが一層重要となる。
(大和総研 シニアエコノミスト 久後翔太郎)