しかしながら彼らは、ゴーン氏が逮捕されるやいなや、手のひらを返したように三菱から一掃されたようです。要は、その頃から三菱は本心から日産の支援を望んでいたわけではなく、ゴーン氏の逮捕をチャンスとして、日産色を一掃したかったということでしょう。
三菱離脱の次に鮮明化するのは、日産と繋がりが深い河西工業やマレリHDの経営難です。そもそも日産のリストラによって自動車の生産台数が大幅に減り、部品の販売が低迷しているため、彼らはかなり早い時期に資金繰りや経営に窮するはずです。マレリについては、銀行団が日産の動向を見るため、借り入れの返済を猶予すると報道されています。マレリは日産に支援を求めるでしょうが、日産は資金力の面で支援し切れないでしょう。
ちなみに、以前の経営危機の際には、銀行が国内販売会社から「貸しはがし」をしようとし、国内営業は右往左往して銀行交渉を行っていました。販売会社の財務基盤も強化されたと思えず、それどころか販売台数減で一層苦しくなっていると思われ、こちらも危機に陥ることは間違いないといえます。
さらに悪いことには、今回のホンダとの統合破談の報を受け、格付け機関が日産のダウングレード(格下げ)やその見込みを発表すれば、とたんに資金調達コストが上がると考えられます。これは、ルノーが参画する以前の日産危機でも発生した動きです。せっかく立てた資金調達の見込みが、翌日にはダウングレードで一からやり直しになったり、一つの銀行に返済すると他の銀行でも同様の「最恵国待遇」を貸し付け条項に入れられ、結果として雪崩現象が起きたりするという悪循環が起きそうです。
忘れてはならないのは、一番資金需要があるのは米国の販売金融会社だということです。彼らが安い資金を得られなければ、販売金融を通じた米国車販売での値引き原資がなくなり、一番の稼ぎ頭である米国でも販売不振に陥ってしまいます。こうなると、まさに危機的な状況です。
統合破談で「待ったなし」
経営陣はプライドを捨てよ
その後は3月以降の通期決算発表、6月の株主総会と、逃げられないイベントが目白押しです。想像以上の業績悪化が発覚すれば、マスコミや株主から厳しい声を浴びせられ、会社として行き詰まりかねません。
結局は、良いケースの場合は実質的な倒産から事業分割による再生へ、悪くすると政府資金を入れた延命措置になるのではないかと、友人は予想しています。今回のホンダとの統合破談によって、日産はまさに「待ったなし」の状況に追い込まれました。
ここに至って経営陣はプライドを捨て、現実的な再生策へと舵を切るべきではないでしょうか。元「日産の中の人」のエールと警鐘が、古巣に届くことを期待します。
(元週刊文春・月刊文藝春秋編集写真長 木俣正剛)