たとえば、北米事業は稼ぎ頭なので、理想としてはGAFAMのような米国資本に買い取ってもらい、自動運転やEV化に関する技術開発のサポートを受けて存続。中国事業は競争力の回復が絶望的なので、事業を中国資本に売って撤退。
日本事業はさすがに祖業の地なので存続させ、開発や生産技術を売ったり、国内ニッチ市場向けの自動車(スカイラインのような高級車の新モデルなど)を少量生産で売ったりして、細々と生き延びる。そして、やはり苦戦している欧州およびアジア事業は撤退するか、現地資本に買ってもらう。
こうして、いずれにしても「日産本体や日本人が経営する」という発想をなくすことで、復活ができるという考えです。
このような提案には反対する関係者が多いと思いますが、私もこれが一番早道ではないかと思います。実際、ホンダとの経営統合が失敗した以上、投資ファンドが買収に乗り出してきても、同じようなやり方を考えるでしょう。であれば、日産の名誉のためにも自ら再編に乗り出す方が良いと考えます。
さて、ここまで「4つのポイント」を解説してきましたが、日産に何もしないで生き残る道はなく、またホンダとの交渉が続いていたとしても、日産の全ての事業を救う力はなかったでしょう。現在の日産は、言うなれば太平洋戦争中にサイパン島が陥落した日本のような状態で、すでに「防衛ライン」が割れてしまっています。このまま悪戦苦闘しても損失は増えるだけなので、経営幹部は恥を忍んででも、前述のような抜本的な対策を決断すべきではないでしょうか。
「今後の悲惨な結末が見える」
たちまち始まる負のスパイラル
さらに、経理部門の幹部として日産を見てきた友人には、「今後の悲惨な結末が見えてしまう」というのです。日産の「企業存続の鍵」はキャッシュです。これをキーワードにして予測してみました。
まず三菱自動車は、今回の統合話から間違いなく離脱していたと思われ、今後は日産との関係解消も目論んで、保有する三菱の株式売却を日産に迫るのではないか、というのです。日産は資金繰りが苦しいのでやむを得ず売却を決断する可能性がありますが、その相手は三菱グループか、もしくはホンダかトヨタ自動車ではないでしょうか。三菱自動車も単独では生き残れないとわかっていますが、「日産はもはや頼りにできない」と判断していると思います。
なお、これはあまり知られていないことですが、三菱自動車の株を取得して救済したのは当時のゴーン社長で、その際には日産からかなりの人材が三菱に出向し、経営指導を行っていたそうです。