●日産を再建するには事業分割しかない

 いくら危機的な状況と言っても、従業員や下請けを含め大量の雇用を実現している日産を簡単に潰すわけにはいきません。しかし、おそらく日産の現役世代は、そこまでの危機感は持っておらず、SNSの投稿のように「人気のある車を出して一発当てれば、すぐ業績が回復する」という淡い期待を抱いていると思います。しかし友人は「自分や業界全体も、それは絶対に無理だと思っている」と断言します。

ルノー傘下入りが嫌なら
「大胆な方法」しか残されていない

 まず、現在の日産を丸ごと維持する一番簡単な方法は、2023年に両社が出資比率を互いに15%にするとした合意に基づきルノーが行っている日産の株式売却を、中止することです。そして「資本関係を元に戻して、フランスの法律に従い、日産がルノーおよびフランス政府の傘下に再び入ることだ」と友人は提案します。

 これならば、ルノー側に大した新規の出費をさせずに日産自動車の資金面での不安がなくなり、またルノーおよびフランス政府が選んだ外国人を社長にして、かつての「リバイバルプラン」のような事業再建ができるからです。メディアでは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業や米テスラとの包括的な提携も取り沙汰されていますが、とりわけアジア系の企業に対して日本企業は優越感を持っているため、折り合いをつけるのは難しいかもしれません。日産にとっては、勝手知ったるルノーを頼るほうが現実的でしょう。

 もちろん、ホンダとの統合交渉が進んでいたときはそうした選択肢はなかったし、破談後もそれは難しいかもしれません。現在、日産とルノーは三菱自動車を加えた3社で対等のアライアンス契約を結んでいるため、日本人としてのプライドが許さないからです。それでは八方塞がりではないかと言えば、そんなこともないと思います。

 今の日産は「Too big to fail」ではなく、「Too big to save」、すなわち大きすぎて全部を救済することが難しい状況です。そこで、日産が自力で再生を図る際に考えられるベストシナリオは、「一度会社を実質的に倒産させた上で、大胆な事業分割を伴う再編によって再生を目指すことだ」と、友人は指摘します。

 これは、一度バラバラに切り分けた事業を、それぞれ最も適切に経営してくれそうな企業に買い取ってもらう、また利益が見込めず買い手がつかない事業は廃業する、というものです。現在の日産というグループから切り離せば、結果としてかなりの事業が生き延びられるし、そこでの雇用も維持できると考えられます。

 その切り分け方ですが、友人は「日産の事業を4つのリージョン(地域)、すなわち北米事業、中国事業、日本事業、その他の事業(欧州、アジアなど)に分けて売る」という案を提案します。