「毎朝1分間日記を書くだけで、奇跡のように人生が激変する」と語る人がいる。コーチングスクール「ホリシニクスアカデミー」学長で、1分朝活グループを主宰する三宅裕之氏だ。その真偽はさておき、こう言われたときにそもそも「毎朝1分日記を書く」こと自体、非常にハードルが高いと感じた人も多いのではないだろうか。しかし、三宅氏は「毎朝1分日記は誰でも続けられる」と語る。それはいったいなぜか。三宅氏の著書『奇跡が起きる 毎朝1分日記』をもとに、その理由を解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

毎朝1分日記Photo: Adobe Stock

毎日日記を書き続けるのは難しい

 地道に物事を継続できる人とできない人がいる。

 筆者は完全に後者だ。三日坊主ならぬ「一日坊主」で、「今日からこれをするぞ!」と決めても、その日だけで終わるという経験が多々ある。

 なんなら世の中の大半のことはきちんと継続できたら達成できるのではないか、と思うくらいに物事を続けるのは難易度が高いものだ。

 大手筆記具メーカーがX(旧・ツイッター)で行ったアンケートでは、日記をつけたことがある人は86%もいた一方、全体の80%の人が「三日坊主で終わった経験がある」と答えた、と本書には書かれている。

 納得の回答である。むしろ、続けられる人が稀有な存在と言ってもいいだろう。

 しかし、三宅氏は「毎朝1分日記にはそんな心配はありません。誰でも、必ず続けられるのが毎朝1分日記なのです」と語る。

 その理由はなんだろうか。

書くことが決まっていると、日記は続けやすい

 日記を続けられるかどうかの鍵を握るのは「習慣化のメカニズム」である、と三宅氏は指摘する。

習慣について20年超にわたり研究してきた米スタンフォード行動デザイン研究所のBJ・フォッグ所長は、人が行動できるかどうかは「実行しやすさ(日本語版では『能力』と翻訳)」「モチベーション」「きっかけ」の3つで決まると分析しています。
実行しにくい行動には高いモチベーションが必要だが、実行がたやすい行動なら低いモチベーションでもできる。そして、あらゆる行動を起こすには何らかのきっかけが必要というわけです。(P.18-19)

「毎朝1分日記が、誰にでも続けられる理由はここにある」と語る三宅氏。その理由の1つに、「1分しかかからないから行動がたやすい」ことを挙げる。

 用意するのは、ノートとペンの2つだけ。家にある普通のノートでいいそうだ。

 そして、日記に書き込むのは次の2つだけでいい。

・前日にあった「グッド」(よかったこと、感謝したこと、気づいたこと)
・今日やりたい「チャレンジ」(挑戦したいこと、変えたいこと)(P.49-50)

 このように、書くことが決まっているというのもポイントだ。

日記を続けられなくなる理由の1つに「毎日書くことなんてない」という悩みがあります。日記をつけたことがある人なら、日記帳の前で書くことが浮かばず、「さて……」とフリーズした経験をお持ちでは。毎朝1分日記は書く内容が決まっているので、そんな心配は不要です。(P.21)

朝のルーティーンに組み込むことで習慣化を

 次にポイントになるのは「毎朝」1分日記であることだ。

 これは前述した人が行動できるかどうかの3要素、「実行しやすさ」「モチベーション」「きっかけ」のうち、「きっかけ」と関係しているという。

一日の中でも、朝ほど行動がルーティーン化している時間帯はありません。
毎朝1分日記を必ず続けられるもう1つの理由が、日記をこれらのルーティーンの中に組み込むことにあります。「○○をしたら、日記をつける」という風に、毎朝のルーティーンのどれかを、日記を書くという行動を起こすためのきっかけにするのです。(P.24)

 また、習慣を身につけるには、同じような状況(時間、場所)で同じ行動を繰り返すと、より習慣になりやすいという研究結果があるのだそうだ。

 そのため、会食があったり、帰宅時間がまちまちだったり、お酒を飲んで酔っ払ってしまったりと、なかなかルーティーン化が難しい夜の時間帯よりも、朝の方が「状況の安定性」を最も手に入れやすい。

 だからこそ、三宅氏は、「習慣化に最適なタイミングこそ、朝なのです」と主張する。

脳のゴールデンタイムにクリエイティブな作業を

 日記を朝に書く理由は、他にもある。

 脳科学の世界では、目覚めてからの約2時間を「ゴールデンタイム」と呼ぶそうだ。

朝の脳は一日のうちで一番元気いっぱい。しかも情報がきちんと整理されており、新しい情報をインプットしたり、クリエイティブなアウトプットをしたりするのに最適な状態にあるのです。
逆にいうと、夜の脳は疲労困憊の状態。脳が疲れた状態では、意思の力が弱まってしまいます。(中略)
また、夜の疲れた脳は、感情のコントロールが苦手で、ついついネガティブになりがち。
反省や後悔、苛立ちや怒りといった負の感情に支配されてしまうことも多く、「グッドとチャレンジを見つける」というポジティブな作業には向きません。(P.30-31)

 これらのことから、三宅氏は「毎朝1分日記は朝書くからこそ、続けることができ、自分自身の感情を自分でコントロールでき、ポジティブでクリエイティブな内容にすることができるのです」と語る。

毎朝1分日記を書く習慣が集中力アップにつながる

 さらに、毎朝1分日記には副次的な効果もあるという。

毎朝1分日記をつけ始めた受験生やクライアントのみなさんが、こぞって口にする感想があります。それは「判断スピードが速くなった」「素早く行動できるようになった」という効果です。(P.32)

 毎朝1分日記は、1分という限られた時間で、自分の思考をノートに書き込むものだ。

 そのため、「1分間に集中して物事を考え、ページ上に整理する。そんな訓練を毎朝続けるうちに、脳はいきなり集中力を高め、エンジン全開で走り始める方法を学ぶ」というのだ。

 他にも、SNSで「毎朝1分日記を始めます!」と宣言してしまったり、「毎朝続けられたら○○する」というごほうびを意識したりすることで、毎朝続けることができるようになるそうだ。

 そして何より、「実行できない日があっても、次の日にまた実行すれば、OK」というのもいい。ただし、実行できない期間が1週間を超えると、習慣作りが難しくなるそうなので、そこだけ注意したいものだ。

 こうしてみると、「毎朝1分日記を書くこと」のハードルは思ったより高くなさそうだし、続けることのメリットも大きいように感じる。

 三日坊主の筆者ではあるが、これなら続けられるかもしれない。何より、フリーランスであるが故に、朝ダラダラしてしまう生活習慣を変えるきっかけになるかもしれないと感じられた。

 いつまで続けられるかわからないが、ひとまず明日から始めてみようと思う。