「死ぬ気でやればやれないことはない」「人生、やるかやらないか」。そんな言葉が世の中には溢れている。そして、これらは主に成功者から発せられることが多い。これにより、多くの人は「成功した人は努力をした人たちだし、努力しないと成功しない」と刷り込まれてきたのではないだろうか。しかし、「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」の開設者であり、実業家のひろゆき氏は「それは努力神話である」「努力を押し付けるのはやめよう」と語る。マイペースに生きる姿を見せてくれるひろゆき氏の、努力に対する考えはどのようなものか。著書である『1%の努力』の内容から紹介する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
「努力」では人に勝てない
成功と努力はイコールで語られがちだ。
そのため、成功した人は「努力した人」と思われることが多い。
また、成功者から「死ぬ気でやればやれないことはない」と言われてしまうと、筆者のような一般人は「はい、すみません……」と縮こまってしまう。
それは、何かを成し遂げられていない理由が「努力不足だ」と言われてしまうと、ぐうの音も出ないからだ。
自分としては努力したつもりでも、「死ぬ気になるところまでやれていたか」と問われると自信を持って「死にそうになりまでやりました!」とはなかなか言えない。
一方、「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」の開設者であり、現在はフランスで実業家として暮らすひろゆき氏は成功者の一人だが、「頑張りを人に押し付けてはいけない」と語る。
なぜなら、「好きでもないものを強要されると、人はそれを努力だと感じてしまう」からだという。
僕が映画を好きで観ているのは、努力だと思ってないし、好きでやっているから、それを圧倒的な努力で映画を観ていることになったら、それは逆に、映画が嫌いなことになってしまう。そうなると、映画が好きな人には勝てない。(P.188)
確かに、したくてしていることに、「努力」は勝てない。
したい人は楽しくて楽しくて、頑張りもせずにし続けられるのだから。
これは仕事も同じであり、ひろゆき氏は次のように語る。
20代から60代後半ぐらいまで働くわけだから、無理しないで長く続ける方が大事だ。
圧倒的な努力で徹夜を何度もやっていたら、いつか倒れてしまう。(P.189)
自分が仕事を好きで、寝ないで働く分には構わない。しかし、「自分がやっているからお前もやれ」になると、人にやらせるのは強要でしかないというわけだ。
「努力できる才能がある人」がいるだけ
努力と成功がイコールとは言えない理由を、ひろゆき氏は次のように語る。
頑張りによってすべてを変えられる「努力が報われる社会」であれば、もっと優秀な人が出てきて日本はいい状態に変わっていたはずだ。(P.192)
おっしゃる通りである。「必ずしも努力が報われるわけではない」ということも私たちは体験として知っているはずだ。
それなのに、なぜか「努力神話」がなくなることはない。どうしてだろうか。
その点について、ひろゆき氏は次のように指摘する。
その才能があれば、あらゆる競争に立ち向かうことができ、突破し、次第に勝つことに慣れていく。
受験競争を勝ち抜いて東大に入ったり、弁護士や公認会計士などの難関資格を取ることができたり、一部上場企業などに入ったりすることができる。(P.192)
そんな「努力できる人」と正攻法で戦っても勝つのは難しい。
だからこそ、ひろゆき氏は「自分にとって頑張らなくても結果が出る場所に行ったほうが、絶対にうまくいく。逆説的な説明だが、それが真理だ」と語るのだ。
人生は、環境や遺伝的要素の影響も大きい
人生は、努力だけで決まるわけではない。身体能力のように遺伝子が影響することもあれば、親が金持ちかどうかなどの環境によっても大きく左右される。
そのため、ひろゆき氏は「一歩引いてみて、自分だけのせいにせず、『1%の努力』で変えられる部分はどこなのかを考えてみるのだ。そうやって考え方のクセを変えることで、人生はラクになる」とアドバイスをくれる。
自分が頑張らなくても結果を出せることは何か。先行者や優秀な人と争わなくてもいい市場はどこにあるか。キャラによっては「いい人」として重宝されるのもひとつの生き方だ。
そういった自分の価値を発揮しやすい場所を見つけることに「1%の努力」を使うといい、とこの本は教えてくれている。
努力し続ける人生に疲れたら、ときにはひろゆき的視点から社会を見てみてはいかがだろうか。
もっとラクに上手く生きていける道が見つかるかもしれない。