利点と難点が表裏一体
トラブル回避意識が高い親も

 私立小学校の魅力である一貫教育は、時に難点にもなります。何かトラブルがあったとき、また波長が合わないご家庭があったときでも、その人間関係が12年間続く可能性があるからです。

 もちろん、ほとんどの学校が中学受験で新しい生徒を迎え入れるので、ある程度はリセットされますが、親御さんの繋がりは継続します。ゆえに、日頃からトラブルを避ける意識を強く持つ必要があるのです。

 特に小学校6年間クラス替えのない慶應義塾幼稚舎や、原則、中学からの入学者がいない聖心女子学院、田園調布雙葉学園では、より一層円滑な人間関係を意識しなければなりません。

 しかし、この点は利点と難点が表裏一体。私立小学校に通うご家庭はトラブル回避意識が高いのがメリットでもあると言い添えたいと思います。

 また、学校への対応も同様です。そもそも、私学は学校の教育方針に賛同して入学するのが大前提です。何か不満があったとしても、「合わなければお辞めください」が学校側の基本スタンスとなります。したがって、トラブルなどへの学校の対応に文句を言わないのが原則です。

 試験を通過した子どもとはいえ、そこは小学生。未熟がゆえのトラブルも想定しつつ、他の親、そして学校と向き合っていく必要があります。

 余談ですが、最近では、SNSへの投稿について学校から厳しい指導を受けている親御さんも多いです。当然、同級生の保護者からも距離を置かれがちです。高倍率の学校に合格した親御さんに多い事象ですが、せっかくの一貫校生活、主役は子どもであることを忘れずに。

書影『小学校受験は戦略が9割』(新潮社)『小学校受験は戦略が9割』(新潮社)
狼侍 著

 一方で、公立小学校から中学受験をすれば、良くも悪くも人間関係の長期化の懸念はありません。小学校での失敗やトラブルは全リセット。程度はあれど、何か問題が発生したときも、私立小学校よりも自由に学校に意見できるようです。

 また、最近の公立小学校はカリキュラムも設備も非常に充実しています。「良い学区」と呼ばれるエリアも多数あり、実質的な少人数教育や給食があること、何よりも自宅からの距離を考えれば、私立小学校が絶対的に優れているとは言い切れません。

 しかし、家庭同士が一定の価値観を共有している私立小学校よりも、様々な家庭環境の子どもが集う公立小学校は、価値観のぶつかり合いが多く発生します。

 トラブルのリスクは低いけれど、人間関係の続く私立小学校か、トラブルのリスクは高いけれど、小学校卒業と同時にリセットできる中学受験か。そんな物差しで測ることも必要かもしれません。