子どもの成長は、日々の「点」の積み重ねによって形成されます。たとえば、2歳頃に「イヤイヤ」と怒る姿や、泣いて主張する場面が見られても、それがその子の将来の人格を決定づけるわけではありません。今見せている行動は、すべて成長過程における「点」であり、これらの「点」が集まって将来の「結果」となるのです。

 しかし、短期的な「点」をすべてだと捉えてしまうと、つい不安になり、子どもをコントロールしたくなってしまいます。「最近挨拶をしないから、この子は恥ずかしがり屋なのかもしれない」と早急に結論づけたり、「このままではいけない」と焦ったりしてしまうこともあります。さらには、すぐに効果が出るような習い事や、強めの言葉での叱責を使って結果を出したくなることもあるでしょう。

今の子どもの姿は
成長過程にすぎない

 毎日の子どもとの時間が濃密だからこそ、目の前の「点」が「すべて」かのように感じることもありますよね。これは、登山で例えるなら、一合目の途中で見ている景色(点)をその山全体の姿だと思い込んでしまうようなものです。子どもの成長は日々の「点」の積み重ねであり、そのひとつひとつを短期的な結果として評価するのではなく、それが将来の姿を形作るための材料であると考えましょう。

書影『詰め込みすぎの毎日が変わる!子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『詰め込みすぎの毎日が変わる!子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
モンテッソーリ教師あきえ 著

 今見せている子どもの姿は成長過程の「点」にすぎません。だからこそ、長期的な視点で成長を見守ることが大切です。

 ここまで引き算の土台となる4つの考え方について見てきました。(1)子どもの「自ら育つ力」を信じる、(2)下に見るのではなく、対等に捉える、(3)子どもの視点で“今”を考える、(4)点の結果ではなく、長期目線を大切に、でしたね。

 この4つの考え方が子どもの育ちにおいていかに大切で、子どもの育ちに影響を与えることもおわかりいただけたと思います。しかし、これは決して子どもだけのメリットではなく、私たち大人にも心や時間の余裕をもたらしてくれ、ウェルビーイングな子育てを実践することにつながります。