競争力の足を引っ張る「介護離職」の現実
食事は宅配食や弁当を利用することで、母親の手間を省き、地域のヘルパーやボランティアがゴミ出しや見守りを行っているという。
「介護が始まった当初は、母は他人に世話されることを嫌いました。しかし、2カ月後には慣れましたし、介護は専門性が高いので、プロに任せる方が安全で質も高い。今は本人も安心しています」
介護のプロに早めに相談し、家族と連携することが両立を成功させるカギだ。良かれと思って自分で抱え込むと、介護度が上がってしまう可能性もあるという。
こういった自身の体験をもとに、佐々木さんは仕事と介護の両立支援事業を立ち上げた。
ビジネスケアラーを巡る課題は、当事者だけでなく企業にとっても大きな問題を含んでいる。介護を理由に社員の労働生産性が低下し、介護離職にまでつながると、企業自体の競争力が失われる恐れもある。
「ビジネスケアラー予備軍は、40代後半から急増する傾向にあります。40代といえば、職場で相応のポジションに就き、意欲的に仕事に取り組んでいる世代です。しかし、そういった働き盛りの方が、介護のために日々の生産性が下がってしまう、ましてや離職を選んでしまうとしたら、本当に大きな損失です」
企業を支える中堅社員が介護により離職してしまうと、生産性が約3割下がるという試算がある。その結果、冒頭でも伝えたように、5年後には日本の経済損失は約9兆2000億円に達すると予測されている。