水野 みんな信者ですか。
島田 みんな信者、イスラム教徒です。でも信者か信者でないかを問わず、誰でも食べられます。モスクだけでなく、それぞれの家でも同じです。そういう伝統はありますが、その分社会福祉の制度は発達していない。
宗教法人の帳簿は
実質的には「非公開」
水野 増上寺、浅草寺、善光寺でもいいです。おそらくお布施でいっぱい蓄えていますが、無税ですよね。
島田 今の宗教法人でも、都市部にある神社仏閣は土地を持っている場合はけっこうあって、それでテナント料が入ります。浅草寺は、一時仲見世商店街の土地は東京都に取られていましたが、それを今は返してもらった。
水野 今は宗教法人も、貸借対照表や損益計算書など財務諸表の公開を求められているのではないですか。
島田 1996年に宗教法人法が改正されて、各宗教法人は貸借対照表、財産目録を保持して、それを所轄の文化庁もしくは都道府県に届けなければいけないことになっています。ただ、宗務課の課長をやっていた前川喜平さんにお話を聞いたら、そうした帳簿は見たことがなかったということでした。
水野 どういうことですか。

水野和夫、島田裕巳 著
島田 オウムの事件が起こった後に、再発防止ということで、宗教法人法が改正されて、帳簿を備えることが義務づけられました。旧統一教会に対して課せられた質問権も、その時に決まったことです。その時は、帳簿は信者などの関係者も閲覧できるとなっていました。
ところが、信者になるのは簡単ですから、誰でも見られるようになってしまう。そうなるとまずいと宗教法人の側が言い出して、信教の自由に最大限配慮するということが、そこに付け加えられた。
その結果、宗務課に帳簿は提出されますが、課長も見ないわけですし、一般の信者でも閲覧できなくなってしまったんですね。
水野 事実上非公開ということですよね。それでは意味ないですよね。
島田 実際、一度も公開されたことはないですね。旧統一教会の帳簿もそうです。公開請求をしたとしてもはねつけられてしまいます。結局のところ、宗教法人は昔からの伝統である不輸不入の権利を保持していることになります。この壁を乗り越えるのは容易ならざることです。