とはいえ政府の仕事はさまざまです。何年もかけて大きな仕事をしなければならない部署の場合は、たまたま前週の仕事には何の成果もなかったということもあるでしょう。それでもその週に何か成果が出る仕事をしたと報告しなければ、イーロン・マスク氏がどのように対応するかわかりません。

 そこで1番目の副作用のように、職員は業務を後回しにしてメールへの返信をどのような内容にするのか、時間をかけて検討することになります。たくさんの連邦職員がそれぞれメールの返信に悩んだ時間を累積すれば、アメリカ市民へのサービスに提供されるはずだった膨大な時間が報告書作成に消えていきます。

 そうやって作成された大量の報告書は誰が読むのでしょうか。マスク氏率いる政府効率化省は小さな組織です。報道によれば最近組織人員の3分の1にあたる21人がマスク氏に抗議して辞任したばかりです。残りの人数で業務報告が処理されるとなると2番目の副作用の匂いがぷんぷんしてきます。

 とはいえ「どうせ読まれないだろう」などと安心はできません。マスク氏がかつてツイッターを買収したときには、エンジニアに向けて「先週書いたコードの行数を報告しろ」と命じたという話があります。SNS上で流れている話では書いたコードの行数が少ない下位のエンジニアを解雇したといいます。

 マスク氏の伝記によればコードレビューはもう少し丁寧に行われたようですが、それにしても2500人いたエンジニアのコードを短期間に3人のマスク氏の部下が評価したのですから、レビューは「効率的に」行われたことでしょう。

 私が連邦政府職員だったとしたら、読まれなくても解雇されるかもしれないというリスクを避けるためには返信メールを簡潔に5行で済ませることはしないでしょう。どうせちゃんとは読まれないとはいえ行数も重要です。

 冒頭の10行で5つの成果をアピールしたうえで、それぞれについてさらに10行ずつ、盛った内容の成果を並べて、これから吹き荒れるかもしれないリストラの嵐に巻き込まれないように注意深く対応したと思います。